ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の今年度の入場者数が、2015年2月、過去最多を更新した。これまでの記録は開業した2001年度の1102万人で、開業翌年には763万人に急減。以来、長く集客に苦しんできた。だが4年ほど前からマーケティングを強化。人気のアニメや漫画のイベントなど、ハリウッド映画にこだわらない企画で顧客層を広げてきた。さらに2014年7月には「ハリー・ポッター」の新エリアをオープン。国内外からの集客増につながった。こうした一連の企画を手がけたのが2010年に入社した執行役員の森岡毅だ。大人も子供も夢中にさせる発想法とは――。
根拠は映画の観客動員「数字は嘘をつかない」
【弘兼】パークのご案内、ありがとうございました。平日にもかかわらず、たいへんな賑わいですね。とりわけ「ハリー・ポッター」のエリアの人気はすごい。大成功ですが、5年前に建設を提案したときには、社内は大反対だったそうですね。
【森岡】売上高が700億円以下だったときに、約450億円の投資を提案しました。ほぼ全員に反対され、社長(当時)のグレン・ガンペルには「会社を倒産させる気か」と言われました。
【弘兼】それでも成功の確信があった。
【森岡】はい。2010年、USJへ入社して2カ月目でした。研修で米国・フロリダの「ユニバーサル・オーランド・リゾート」に行き、「ハリー・ポッター」のプロトタイプを目にしたんです。僕は感動で涙を流しました。実は入社以前から「ハリー・ポッター」のファンで、小説と映画はすべて見ていたんです。そうしたファンの目線で見ても、納得できるすばらしいものだった。ぜひこれを日本でやりたいと思いました。
【弘兼】社長や幹部など、周囲をどうやって説得したのですか。
【森岡】私は「数字は嘘をつかない」という考えをもっています。まずは数字にもとづく客観的なデータを示す必要があると考えました。そのために考え方の違う3つのモデルで「需要予測」を行うことにしました。