“カワイイ”がわからない。欠陥から生まれたトライ習慣
CMO森岡毅のUSJでの4年間は、“やってみないとわからない”テーマパーク業界でアイデアを当て続けた、奇跡のような道のりにも思える。
しかし、自らを「数字のロボット」と呼ぶ森岡には、マーケターとしてある致命的な欠陥があるのだという。それは、“カワイイ”という感覚が理解できないことだ。
「僕は頭の中がメカニカルでロジカルに動く人間で、“感性”や“共感”というものが抜け落ちているんです(苦笑)。前職のP&G時代は消費者マーケティングについて学び、そのことに気付かされました。シャンプーなどのヘアケア製品を担当していたので、『どのパッケージデザインがかわいいか』などという話がよく出るのですが、自分がわからないなりに良いと思って選んだものが、必ず消費者チョイスとズレてしまう。20代はこの苦しみとともに働いていたようなものです」(森岡)
ちなみにP&G時代に森岡は上司からしばしばこう言われていたそうだ。
「お前、石油売れ。石油とか、小豆の先物とか、金融商品とか、そういうのを売るのが合ってるよ」
だが、転んでもただでは起きないのが森岡だ。
“共感”できないならばせめて他人よりも"理解"しようと始めたのが、何でも自分で試してみるという習慣だった。P&G時代は、髪を金髪のスパイキーにしたり、真っ赤なソフトモヒカンにしたりして、消費者“理解”に努めた。