【森岡】なぜ笑うのか。なにが楽しいのか。仮説を立てて、要素を因数分解して、検証していく。仮説が検証されれば、数値に置き換えられます。振り返ってみると、センスがなくてよかったと思います。中途半端にセンスがあると、自分の感覚に頼ってしまう。感覚に頼ると、センスがズレたときに修整できない。

【弘兼】誰でもセンスは古びますね。

【森岡】そうです。その点、ぼくは今も昔もズレているんです(笑)。だから自分の主観を殺して、客観的に消費者がなにを面白いと思っているのかを分析することができました。

【弘兼】消費者目線を徹底するということでもありそうですね。

【森岡】P&Gの米国本社にいたとき、何度も言われたのは「Consumer is Boss(消費者こそが私たちのボス)」というフレーズです。

【弘兼】いつからアメリカに?

【森岡】入社以来、基本的に日本にいたのですが、2004年にブランドマネジャーとして評価されて、米国本社の主力製品担当に抜擢されました。そのとき評価してもらったのが、テレビCMをつくる能力です。

【弘兼】センスがないのに、CMを?

【森岡】はい。ぼくはCMをつくるのが、結構、得意なんですよ(笑)。CMの制作現場に徹底して数字とロジックをもち込みました。どのタレントで、どんな演出をするべきか。クリエイティビティや感性は二の次で、客観的なロジックと数字にもとづく戦略で、CMをつくる。そのほうが当たる確率が高いんです。

【弘兼】当時からUSJのようなエンターテインメントの世界で働くことも考えていたのですか。

【森岡】全然考えていませんでした。個人的には大好きなんです。妻と初めてデートした場所は、兵庫県にあった宝塚ファミリーランド。世界各地のディズニーランドはのべ100回以上、プライベートで訪ねています。娘の呼び名は「ミキ」。ミッキーマウスにちなんだ名前です。USJにも何度も遊びに行っていました。

【弘兼】ヘッドハンターから声をかけられたそうですね。

【森岡】最初はまったく乗り気ではありませんでした。経営がうまくいっていないと思っていましたから。