「センスがない」から数字とロジックで勝負

【弘兼】森岡さんは神戸大学経営学部のご出身ですよね。数字にこだわるようになったのはいつからですか。

【森岡】小学生のころから得意科目は算数でした。国語は苦手で、漢字のドリルは拷問みたいに感じました。

【弘兼】兵庫県の伊丹に長く住んでいたそうですね。それで神戸大学に?

【森岡】神戸大学の経営学部には数学の「一芸採用枠」があったんです。経営学部であれば、得意の数学で社会の役に立てそうだ、と。結果的にその枠は使わずに済んだのですが、受かる自信はありました。

【弘兼】大学卒業後はプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)に進まれていますね。P&Gのマーケティングは世界的に有名ですが、マーケター志望だったんですか。

2015年2月20日に行われた「年間最高入場者数記録更新」の記念セレモニーの様子。これまでの記録は開業初年度である2001年度の1102万人だった。

【森岡】当時は経営者になりたかったので、最初はファイナンス部門で内定をもらったんです。でも「あなたはどう考えてもマーケティング向きだ」と言われて、マーケティング部門に誘われました。ぼくが「社長になるのはどっちが早いですか」と聞くと、人事には「歴代社長はすべてマーケティングの出身だ」と言われました。マーケターになったものの、最初の5年はとても苦しみました。

【弘兼】なにに苦しんだんですか。

【森岡】マーケターとしては致命的なことに、ぼくはセンスがないんです。

【弘兼】センスがない?

【森岡】はい。物事を感覚的に捉えることができないんです。P&Gには、パッケージを見ただけで「これはウケる」「これは売れない」とわかる人がいました。消費者テストをする前から、結果をピタリと当てられる。一方、ぼくが「これはいい」と思ったパッケージは、テスト結果が最低だったりする。だから自分なりの方法を発明するしかありませんでした。

【弘兼】それが「科学者のように分析する」というやり方ですね。