メーカーに依存しないコンピュータシステムのコンサルティングや開発で独自の境地を開拓するフューチャーアーキテクトの創業者で現会長の金丸恭文氏も、野間口氏と同じ薩摩隼人の血筋を引いている。西南の役で西郷隆盛と一緒に戦った先祖を持つ。金丸会長は生まれこそ大阪だが、人格形成で重要な中学校から高校までの時期を父親の故郷である鹿児島市で過ごした。
チャレンジ精神に富み、豪胆で元気な人物を数多く輩出する薩摩独特の気風を「ぼっけもん」という。そうした気風を全身に浴びながら育った金丸会長だからこそ、89年に35歳の若さで起業し、08年度実績で売上高281億円、営業利益26億円という東証一部上場会社へ育てられたのだろう。また、金丸会長は経済同友会の副代表幹事として日本経済の舵取りも担っている。
新渡戸の『武士道』をはじめとする東洋の思想や哲学に関心を持ち、自ら原典を紐解いていた金丸会長に、親しい経営者から「渋沢栄一の『論語と算盤』を勉強してみないか」と誘いの声がかかったのが2年ほど前のこと。結局、10人近い経営者の賛同が得られ、章ごとに毎回の担当者を決め、書かれている内容に対する自分の意見をまとめたうえでプレゼンし、参加者で議論していく勉強会が始まった。
その7回目の勉強会のプレゼンテータが金丸会長で、くしくも担当した章が「実業と士道」であった。「強欲資本主義とか、行き過ぎた金融資本主義とか、世界や日本が直面している根源的な問題を再認識させてくれたうえに、派遣切りなどリーダーとしてのモラルはいかにあるべきかを問い直すきっかけになった」と金丸会長は率直な感想を述べる。