やり抜くために必要なのは「熱意」「自制心」「忍耐力」

「大村先生は、レジリエンスの高い人が多くもつ気質である『グリット』も抜きん出ていると思われます」

グリットとは、心理学の研究で、達成困難と思える長期の高い目標に向かって、熱意と粘り強さをもって、不屈の精神で根気強く努力をつづけられる性格的な特徴を表す。各分野の専門家や識者がプレゼンする人気のトークライブ「TED」で、アメリカの心理学者アンジェラ・リー・ダックワース教授がプレゼンした動画である「成功のカギは、やり抜く力」は700万回以上も再生されている。ここでも「やり抜く力=グリット」がキーワードとなっている。

「大村先生は、高校時代にスキーのクロスカントリーで国体に2度出場し、教師から研究者になるという大きなキャリアチェンジにも踏み出している。ご本人もよく話すとおり、負けず嫌いな性格で、“やり抜く力”が卓越していると思います」

グリットは「非認知能力」のひとつとして捉えられている。00年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマン教授は、人間の能力(人的資本)は「認知能力」と「非認知能力」の2つに分けられると説明した。認知能力は「読み・書き・そろばん」のようにIQやテストで判定できるもの。それに対して非認知能力は、真面目さ、粘り強さ、自制心、忍耐力、気概、首尾一貫性などの気質にかかわるものを指している。

非認知能力の高さは、本人が生まれもつIQや育った家庭の収入と同等以上に、学校での成績や将来の収入に影響を与えるとされる。

「グリットなどの非認知能力は、子供の頃から育てることが重要ですが、成人後も伸ばすことができると考えられています。高く困難な目標を達成する秘訣となる“やり抜く力”を形成するためには、心理学における3つの強みを形成することが重要だと考えます」