人事部主導で進める“倒れさせない”異動者向けのケア

トップ主導のSCSKに対し、KDDIでは人事部の労務グループが中心となってメンタルヘルス教育に取り組み、精神不調による休職者を減少させている。

「12年に私が現職に赴任したとき、社員のメンタルヘルスケアは産業医に任せっぱなし。メンタルヘルス不調で休職している従業員数を見て驚きました。人が休むということは生産力のダウンですから、休職者の増加は未然に防がなければいけない」(KDDI総務・人事本部人事部 労務グループリーダー 武重仁之氏)

まず着手したのがeラーニングだ。当時、武重氏と同様の問題意識を持っていた労務グループの担当者は、過去3年の間に休職した社員のケースを1つひとつ洗い出した。一般に販売されている教材ではなく、自社の実態を踏まえた独自の教材を作成するためである。その調査内容に基づき、管理職向けラインケアと異動者向けセルフケアの双方へのeラーニングを作成し、リリースした。

「当時はまだメンタルヘルス予防の知識が不十分だった管理職層に対して『こんなケースのとき、どう対応すればよいか』と考えさせるようなeラーニングを展開しました。また、調査していくうちに7月にダウンする人が顕著に多いことがわかりました。4月に人事異動した人がだいたい3カ月後にダウンしていたのです。そこで人事異動した人に向け、異動後1カ月以内に受けてもらうeラーニングを作成しました」(武重氏)

異動者向けのeラーニングは好評で、該当者以外にも口コミで広がり、多くの社員が受講している。

また、14年度からはメンタルヘルス不調による休職者が多い部署を本部単位で3本部ピックアップし、管理職対象の集合研修を実施した。

「職場で直接接している管理職が早く気付かないと、本人も気付かず症状が悪化する恐れがあります。メンタルヘルス不調のチェックポイントと、放置するとどんなリスクがあるかといったお話をしています」(同マネージャー 香取由美子氏)