有休完全消化と残業削減が最優先の経営課題

11年に住商情報システムとCSKが経営統合して誕生したITサービス会社SCSKでは、働き方改革に取り組んでメンタルヘルス不調による休職者を減少させた。しかもその間、増収増益を続けている。

働き方改革に取り組んだきっかけは、中井戸信英会長が住友商事副社長から住商情報システムの社長に就任した09年にさかのぼる。

IT業界では長時間労働や残業の多さが慢性的な課題となっている。SCSKもその例外ではなく、さまざまな対策は打つものの十分な成果を得られていない状況があった。

「就任したとき、中井戸は職場環境の悪さに驚いたと言っています。1人ひとりの執務スペースは狭く、昼休みには机の上に突っ伏して昼寝をしている人が多いと。社員が働きやすい環境をつくれば生産性が高まり、最終的に企業価値の上昇につながるという考えを持っていた中井戸の主導で、働き方改革は始まりました」(SCSK人事グループ 新開和磨人事厚生部長)

10年に本社を移転し、社員食堂や社内診療所、リラクセーションルーム等を設置。さらに、社員1人当たりの執務スペースを1.5倍に広げ、快適な空間づくりに取り組んだ。

そのうえで、働き方改革として残業半減運動、在宅勤務制度の拡充などさまざまな施策が実施された。

なかでも効果が大きかったのは13年4月からスタートした「スマートワーク・チャレンジ20」である。これは年間有給休暇取得日数20日の完全消化と、当時約27時間だった月間平均残業時間を20時間以下にすることを目標に掲げた取り組みで、社内ではスマチャレと呼ばれている。

「スマチャレの特徴は残業手当が支払われる一般の社員だけでなく、管理職も対象に含めていること。そして全役員が出席する会議で月に2回、残業時間の実績や予想、有給休暇の実績を部署別に報告しました。売り上げや営業利益などと同等、もしくはそれ以上に重要な経営指標として扱われたのです。そして何より社員の心に訴えたことが成功の理由でしょう」(SCSK人事グループ 山口功ライフサポート推進室長)

会議で残業の多い部署があると、中井戸会長が部門長に「号令だけでは解決しない。タイムマネジメントは事業マネジメントの基本中の基本。自ら現場で何が起きているのか確認し、根本的な対策を打て」と指示を出した。こうした会議での発言内容は社内のイントラネットに掲載され、全社員にトップの方針と本気さが伝えられた。