高校時代は渋谷のブルセラショップに通い、慶応大学ではキャバクラ嬢とAV女優を経験。東京大学大学院修了後は日経新聞の記者に。流浪の社会学者が見つめる現代女性の価値観とは──。
日経記者では満足できなかった
【田原】鈴木さんご自身の話に戻りましょう。AVに出演しつつ、東大の大学院に進学しますね。これはどうして?
【鈴木】AV女優はそんなに長くできる仕事じゃないです。だから人生を生き抜いていくために、ほかにもいろいろ取っ掛かりが欲しいなと思って。
【田原】それで、どうして東大?
【鈴木】私、ブランド好きで(笑)。慶応も響きはいいんですけど、入っちゃうとまわりも慶応生ばかりだから普通になっちゃう。それならやっぱり東大かなと。
【田原】東大はどうでした?
【鈴木】東大の図書館は地下に続く階段が金属になっています。そこをハイヒールでカンカンカンと響かせながら降りるのが、なんだかとっても気持ちがよくて。やっぱり私は夜の世界だけで生きていくことはできないなと思いました。
【田原】あなた、東大もハイヒールなんだ(笑)。ところで、まわりの人たちは鈴木さんがAVに出ていることは知っていたのですか。
【鈴木】知ってる人もいました。ただ、知っていても言わなかったり、逆に私から告白すると、「大丈夫。知ってるから、何でもないよ」みたいな態度を取ってくれる人が多かったです。
【田原】東大生はやさしいね。
【鈴木】そうですね。でもやさしくしてくれるわりに、私はモテなかった。興味はあっても、奥さんにしたいとは思ってくれないみたいで。
【田原】AVをやめたのも、それが理由?
【鈴木】いや、やめたのは私の価格が暴落したからです。AV女優って、一通りのジャンルに出ると、もう売るものがなくなっちゃうんですよ。続けるとしたら、ものすごくハードなものに出るか、ギャラを下げるしかない。それならもういいかと。
【田原】それでAVをやめて、日経新聞に就職したと。
【鈴木】もともと1回ちゃんとした企業に勤めてみようとは考えていました。修士課程が終わるタイミングで夜の仕事も一区切りついたので、とりあえず入ってみたという感じです。