【田原】でも、5年で辞めちゃった。最初から、ある程度働いたら辞めるつもりだったのですか。

【鈴木】そういうわけじゃないんですけど、やっぱり1つのことだけをやるのは苦手だったみたい。本当は副業禁止でしたが、じつは記者になってからも昔働いていたお店に月1で出勤していたし(笑)。

【田原】『「AV女優」の社会学』を書いたのも、日経新聞時代ですね。

【鈴木】そうです。新聞社に勤めていると顔出しが難しく、取材はぜんぶお断りしていました。だんだんそういうことがわずらわしくなってきたことも会社を辞めた理由の一つです。次にエッセイ集『身体を売ったらサヨウナラ』を出したのですが、表紙にバーンと顔を出しました。

【田原】じゃあ、いまの職業は何?

【鈴木】フリーの文筆業かな。ただ、完全にフリーでこの世を生き抜くのは大変なので、何か足場はあったほうがいい。それで今春から東大に戻って博士課程に籍を置いています。

【田原】そうですか。僕は大学院に戻ってもおもしろくないんじゃないかと思うけど、どうですか。

【鈴木】自分のものの見方をもう少し広げたいんです。私は学部のときも修士のときもフィールドワークが好きで、理論のほうは本当に最低限のものしか勉強しませんでした。でも、それだと切り口が浅くなっちゃうんですよ。もちろん家で1人で勉強することもできると思いますが、私はそこまで意志が強くない。それなら大学に籍を置いて、「これを読め」と言われたほうが楽かなって。