民間から宇宙へ。アメリカの団体が主催する月面探査レースでひとりの日本人が奮闘している。袴田武史――『スター・ウォーズ』に影響を受け、宇宙開発を夢見る青年が目指すものとは。
月面500メートル移動で賞金2000ドル
【田原】袴田さんが代表を務めるチーム「HAKUTO」は、「Google Lunar XPRIZE」という賞金レースに参加されているそうですね。これはいったい何のレースですか。
【袴田】アメリカに、賞金レースを活用してイノベーションを促そうとしているXPRIZE財団という団体があります。彼らが主催するプロジェクトの一つに、月面にロボットを送り込み、500メートル以上移動させて、月面の映像を地球に送り返したら勝ちというレースがあります。それが、「Google Lunar XPRIZE」。名前からもわかるようにグーグルがスポンサーになっていて、ミッションを最初に成し遂げたチームは賞金2000万ドルを獲得できます。
【田原】賞金レースでイノベーションを促すってどういうことですか。
【袴田】これから月の開発が進んでいくと、民間で地球から月に物資やロボットを輸送する時代に入ります。その技術を早く実現させるために、賞金レースを活用して競わせようというわけです。
【田原】まだちょっとわからない。月を開発するって、何を開発するの?
【袴田】たとえば資源開発です。よく取り沙汰されるのはヘリウム3。核融合すると莫大なエネルギーが取れるので、エネルギー資源として注目されています。もっとも、核融合の技術が確立するのはまだ先の話です。現実的な資源として有望なのはレアアースだと思います。
【田原】レアアース?
【袴田】隕石にはレアアースが含まれています。じつは地球のレアアースもほとんどが隕石からきています。月には隕石が落ちたままなので、かなりの量のレアアースが眠っているといわれています。それからもう一つ、水も重要な資源として注目されています。