【田原】月に水があるのですか。空気がないのに?

【袴田】NASAが大胆な実験を行って、月に水があることを確認しました。月の南極にミサイルを撃ち込み、飛び散った岩を分析して、水の成分があることを見つけたのです。水は人間の生存には必要ですし、水素と酸素に分けることで燃料にもなる。非常に期待されています。

【田原】なるほど。

【袴田】資源を開発したり月面に基地をつくるときには、月にロボットを送り込む必要があります。そのためのイノベーションを、このレースによって促そうとしているのです。

【田原】わかりました。このレースには、どれくらいの数の団体が参加しているのですか。

【袴田】レースは2007年に開始されていて、もっとも多いときで34チーム参加していました。ただ、途中で断念したチームも多く、現在は18チームが残っています。

【田原】参加は世界各国から?

【袴田】はい。ただ、1つの国で1チームという決まりはないので、アメリカは4~5チームあるし、ヨーロッパからも複数のチームが参加しています。日本から参加しているのは、私たちだけです。

【田原】袴田さんは、そもそもなぜ宇宙に関心をお持ちになったのですか。

【袴田】子どもっぽいんですけど、小学生のときに『スター・ウォーズ』をテレビで観て、宇宙船、かっこいいなと。それがきっかけです。

【田原】大学で航空宇宙工学を学んだ。

【袴田】名古屋大学の航空宇宙工学コースに進みました。ただ、自分がやりたい勉強ができて嬉しかった半面、違和感もありました。

【田原】どうして?

【袴田】各研究室が非常にレベルの高い研究をしていました。ただ、1つ1つは最先端ですが、それを組み合わせて宇宙船をつくることを研究している研究室がなかった。探してみると、アメリカのジョージア工科大学に航空宇宙工学の概念設計を研究しているところがあった。それで修士課程はそちらに進みました。