モルガン・スタンレー、楽天球団を経て起業。会員制転職サイトを開設し、創業6年で従業員は500人を超えた。経歴だけなぞると順風満帆そのものだ。だが、その裏には人並外れた意志と行動力、そして天性の明るさがあった。

「話を聞きたい」と米社長に直メール

【田原】ブラックボックスはどうやって解消したのですか。

ビズリーチ社長 南 壮一郎氏

【南】身近に楽天市場といういいお手本がありました。インターネットが普及する前は、売り手と買い手がいてもお互いの情報がわからず、問屋さんや小売店を通して流通させるしかありませんでしたよね。だから売りたい人は問屋さんの言いなりになっていたし、買いたい人はほかでもっと安く売っていても近所の店から買うしかなかった。これを変えたのが楽天市場やアマゾンです。売り手と買い手、お互いに情報開示をして可視化させれば、あとは市場原理に従ってもっとも効率的かつ効果的に取引できる。これと同じことを人材業界でやれば、流通革命ならぬ採用革命を起こせるんじゃないかと。

【田原】アメリカにはそういうサービスはなかったの?

【南】調べてみたら、すでにラダーズ・ドットコムとか、リンクトインといったサービスがありました。ラダーズ・ドットコムは当時で数百万の求職者が利用していて、数万社の企業が使っていました。さっそく社長のマークさんに「話を聞きたい」とメールをしたら、「いいよ」と返ってきました。メジャーリーグのときと同じで、すぐニューヨークに飛んで話を聞きました。

【田原】南さんは身軽ですね。そのときは何かアドバイスをもらえたの?

【南】求人のマッチングは結婚相談所ビジネスを参考にするといいと言われました。結婚相談所は、男性と女性の両方から料金を取ります。それは、お互いにお金を払っているからこそ真剣に相手とコミュニケーションを取るから。求人のマッチングも、そうしたほうが満足度は高いというのが彼のロジックでした。

【田原】なるほど。日本の場合、求職する側は無料ですね。

【南】ただ、それはインターネットの時代になってからです。紙媒体だったころは、企業が広告を出して、求職者も就職雑誌を買っていました。つまり日本ももともと求職者がお金を払って情報を得るモデルだったわけです。そのことを考えれば、求職者から有料の情報誌同様にお金を取るモデルにしたほうがむしろいい人が集まって、求人企業にとっても有意義なものになるかもしれない。そう考えて、会員制の転職サイト「ビズリーチ」を始めることにしました。