克服本の「場数を踏め」という言葉に、「それで治るならとっくに治っている」と怒りを覚えたことのある方もいるだろう。どう付き合うのが得策か。あがり症の元トップ営業マンで、現在は内向型営業マンの育成を専門にセミナーや講演などをおこなう、渡瀬 謙氏に聞いた。

自分で勝手に設定したハードルを下げる

あなたはひょっとして「うまくやろう」と思っていませんか? 私が問いかけたいのは、この一言に尽きます。

実は私も極度のあがり症で、人前に出たり、誰かに注目されたりするのが苦手です。ところが、リクルートでトップ営業マンになり、今ではセミナーや講演で大勢の人を前に話しています。かといって、あがり症を克服したわけではありません。考え方を改め、行動パターンを変えたことで、あがり症の自分と向き合うことができたのです。

私もそうですが、あがり症の人はとかく、完璧主義のええかっこしいなのです。100点満点を目指そうとして、余計にあがってしまう。まず、自分で勝手に高く設定してしまったハードルを下げて、うまくやろうという気持ちは捨てましょう。そのうえで、自分の目的が何であるかをしっかり見定め、それを達成することだけを考えればいいのです。

例えば、あなたが営業職の場合、目的は営業成績を上げることです。立て板に水のトークで、顧客に商品の魅力をうまく説明したり、面白い話で笑わせたりすることではありません。伝え方や話し方、声の大きさといった表現方法が気になってしまいがちですが、それを気にしすぎて相手に肝心の内容がうまく伝わらなければ、本末転倒です。

目的を見極め、それを達成するには、あがり症である自分をしっかりと自覚しておき、いかにあがらず持ち味を発揮できる場をつくれるかにかかっています。最初から勝てそうでなければ、勝負に臨まなければ決して負けることがないように、あえて苦手な部分にはタッチしない、勝てそうな勝負だけに臨むことが大切です。ではシーン別に、あがらないための具体的な方法を挙げていきます。