相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。

「ここだけの話にしてください」「ご内密に」は事態悪化の禁句

例えば、白紙の領収書をもらい、実際に支払った額よりも多い数字を書き込んで、その差額を自分のものにすれば会社に対する詐欺・背任・横領の違法行為になる可能性が高い。軽い気持ちでしたことが、最悪の場合、解雇といった重いペナルティにつながるリスクがあるのだ。高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏は語る。

「発覚したら、二度といたしません、と反省・謝罪の弁を述べて襟を正すべきです。経費精算で、こんな細かいところまでチェックはしないだろう、とバレなければOKと高をくくっていると、コトは遅かれ早かれ発覚するものです。また発覚した際、『ここだけの話にしてください』『なにぶん、ご内密に』『どうか、なかったことに』など保身に走ったセリフは禁物です」

一方、立正大学講師で心理学者の内藤誼人氏は、交際費・接待費などを使いすぎたとき、社内の経費ルールが曖昧だったような場合の謝罪法をこう述べる。

「『申し訳ありません、今回の件は不勉強だった私がお支払いします』と領収書を戻してもらい、自腹を切ることを表明したうえで、『ところで、いくらまでなら大丈夫だったのでしょうか』と社内の“常識的範囲”を提示してもらえば次回はミスしなくてすむ」

謝罪の急所:二度としません、で解雇回避

高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。
(大塚常好=構成)
【関連記事】
不良品発生! 謝罪の「可視化」で失地回復
アポイントに遅刻。心に響く「3段階謝罪法」
急ぎの依頼を失念。怒りの矛先かわす「花束理論」
「領収書改ざん」が会社にばれたらどうなるか
人生を変える「反省力」のススメ