相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。

電話→口頭→メール→手紙。メディアを変えれば、心に響く!

「アポイントに遅れた」という、手痛い失敗。高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏は、素直に詫びるしかないと語るが、この「素直」というのがポイントなのだ。

「こちらの不手際で相手に誤解を与えた場合、誤解を解くための弁解は必要ですが、この場合、こちらの立場を守ろうとするエゴ的弁解は絶対にタブーです。弁解と言い訳は似て非なるものであり、迷惑を与えてしまったこちら側の配慮不足についても謝るという謙虚な姿勢こそが必要です」(高井氏)

数分の遅刻なら大したミスではないと内心、事態を軽く見る部分がどこかに潜んでいると、たちまち謝罪のクオリティが落ちると、高井氏。

「遅れてしまって、すみません」

表面上は遅刻したことに対して恐縮したように見えても、誠意・心がなければ、謝罪の言葉も「申し訳ございませんでした」ではなく、軽い「すみません」となってしまうことがしばしばあるというのだ。高井氏は語る。

「『すみません』とペコペコ平謝りすればすまされると思っている人は案外少なくありません。『すみません』の安売りは軽蔑の的となるだけなのです。言うまでもなく、謝罪は自分がよくないことをしたと正確に認識するところから始まります。この前提条件があって、はじめて謝罪の言葉に真実味が出てきます。顧客や取引先といった外部の人、また上司など社内の人に対しても『すみません』を連呼すると口先だけのお調子者か、弱腰の人間だと思われるだけです」