相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。

まず、お詫び。次に、少し弁解。締めは再びお詫び。読後感を意識

発注数のケタを書き間違えたといった、ヒューマン・エラーは誰にも起こりうる。与えた損失の規模にもよるが、それほど巨額でなければ、「今度から気をつけてくれよ」でことなきを得ることもある。だが、過誤を犯した社員から会社に対する謝罪にはそれなりのコツがある。高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏は語る。

「提出を求められる始末書の書き方が一番のポイントです。うっかりミスである場合、つい言い訳を書き連ねたくなります。しかし、その気持ちを抑えて率直に反省と謝罪に徹します。まずは、きちんとお詫びの気持ちを書くこと。そのあとに何か弁解したい内容があれば書いてもよいですが、それで文書を終わらせてはいけません。それだと読後感が『言い訳ばかりで、反省をしていない』と取られかねません。ベストは、お詫び→少し弁解→改めてお詫びと会社に迷惑をかけたことに対する申し訳ない気持ちをサンドイッチ式にして締めくくることです」

立正大学講師で心理学者の内藤誼人氏は軽率なミスの反省を踏まえつつ何かを会社に提案すれば、少し名誉挽回できる可能性があるという。

「例えば、『私が今回間違えたからこそ思うのですが……』と、発注する入力フォーマットや伝票などを直属の上司だけでなく、その上の上司にも見てもらうようなWチェック体制を提案したほうが、ただペコペコ頭を下げて謝るよりマシです。今後も同じミスを誰かがしなくてもすむようにと建設的なカイゼン提案をできる人材だと思ってもらえるかもしれません」

謝罪の急所:始末書は、サンドイッチ式で

高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。
(大塚常好=構成)
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