お金持ちになって、南の島でのんびり。多くの人が抱く夢の一つではあるが……。(PIXTA=写真)

人生における、成功とは何だろう? 成功と幸せの関係は、どんなものなのだろう?

夢は、実現しないよりは成し遂げるほうがいい。ただ、どんな成功者でも、じんわりと心にしみわたるような幸せを感じるためには、絶妙な心のバランスが必要なようだ。

よく知られた笑い話の一つに、アメリカ人が南の島に最新の船をセールスしに行くというものがある。男は、その船を使えば今までの何十倍も魚がとれると力説する。

「そんなにとっても、食べ切れない」と島の人が断ると、「余った魚は売ればいい」とセールスマン。「売ってどうする?」「お金が儲かる」「金持ちになってどうする?」「バカンスに行って、南の島の浜辺でのんびりできるぞ」。

そこまで聞いて、島の人はあきれたように肩をすくめた。「私たち、今まさに南の島の浜辺でのんびりしているんだけれど」。

心のゆとりや、余裕を得るために働くという考え方がある。お金があれば、自由に生きることができると青年は考える。

しかし、本当は、そんなに働かなくても、自由はもともと手にしているのかもしれない。必死になって成功して、やっと余裕ができる。それは、ある見方をすれば、一周して「ふり出し」に戻ったということなのかもしれない。

孫正義さんにお会いしたとき、その着想と行動の力が非凡だと感じた。

高校1年の夏にアメリカに行き、「来るしかない」と屈指の進学校を退学し、そのままアメリカに渡ってしまった孫正義さん。そこから、がむしゃらに勉強して、大学に編入し、IT起業家への道をまっしぐらに進んでいく。

世間では、孫さんはとにかくエネルギッシュで力強い人というイメージがあるだろう。もちろんその通りであるが、私は少し違った側面にも注目している。