「お金が足りない」。どんな裕福な人々も皆この言葉を口にする。私たちに本当に足りないものは何なのか。安倍昭恵首相夫人が円卓会議に招いた世界的ビジョンリーダーが答えた。
本当の豊かさとはなんでしょうか。お金があれば幸せになれるのでしょうか。いくらの貯金があればあなたは安心できますか。
理想の生活を送るために、物質的にも精神的にも豊かになるために、もっともっと多くのお金が必要である。多くの人はこの「神話」にとらわれて、お金とあなた自身の正しい関係にたどりつくことができません。人の欲には際限がないからです。貯めれば貯めるほど不安になるもの。それがお金なのです。
私は「ハンガー・プロジェクト」のファンドレイザーとして2億ドル以上の資金を集めるかたわら、世界中を飛び回り飢餓と戦ってきました。世界中で数えきれないほどの人々と出会い、それらの人々がお金とどのような関係を築いているかを目の当たりにしてきました。目の見えない小さな赤ん坊を抱えて物乞いをする母親、アメリカ大手食品メーカーのCEO、グアテマラのシャーマン、日本のサラリーマンたち、そしてマザー・テレサやダライ・ラマ法王といった世界的な精神的指導者まで。そしてお金に支配されるのではなく、お金を正しく使うことが本当の豊かさを教えてくれることを知ったのです。
「ハンガー・プロジェクト」は、地球から飢饉・飢餓をなくすために1977年のサンフランシスコで誕生しました。「宇宙船地球号」の概念を世界に提示したリチャード・バックミンスター・フラー、そして世界中で100万人以上が参加した「エスト・トレーニング」の開発者である思想家、ワーナー・エアハードがその創始者です。そして2人は私のメンター(指導者・助言者)でもありました。
2億ドルという金額を耳にして、大企業や資産家からの100万ドル単位での寄付を想像する方は多いでしょう。しかし実際のところ、私の呼びかけに共鳴し、活動にコミットした人々の多くは企業というかたちではなく、個人として資金を提供してくれたのです。そして私が強調したいのは、世界の中で最も資金調達に成功した地域の一つが、この日本であったということです。
私は80年代の日本に幾度となく足を運びました。当時の日本はとてつもない経済成長のさなか、つまりバブルの中にありました。その日本で資金を集めたというと、あり余る富を投げ捨てるような姿を想像するかもしれません。しかし、現実は違いました。彼らは太平洋戦争前後に、実際に耐え難い空腹を経験していました。だからこそ単なる金銭の提供者ではなく、活動を広げ、支えていく賛同者として、心から私たちの活動にコミットしてくれたのです。
彼らはなぜバブルの熱狂の中で、目の前のお金に左右されることなく、人生の目的について考え、そしてまた世界の人々と助け合うことを選択できたのでしょうか。結局、豊かさの実感とは、積み上がったお金で得られるものではなく、お金を寛大に使うことによってもたらされるものなのです。