成長し続ける人は、「何のために働くのか」を大事にするだけでなく、お金を使うときも、「何のために使うのか」をつねに意識する。

株式会社オンテックスの小笹公也会長は、クルーザーを所有し、和歌山のマリーナに係留している。いまは、多くの時間を和歌山で過ごすという。競馬の馬主にもなっている。

だが、それを喜んでいるのは、小笹会長本人ではなく、若い社員だという。

若い社員たちにとっては、いつか自分も小笹会長のようにクルーザーや馬をもちたいという思いが、仕事の活力になっているのだ。

小笹会長が、アルバイトで塗装の仕事をはじめたのは17歳のとき。21歳で独立して会社を興した。その会社を、20数年で年商100億円超のリフォーム会社に育て上げた。現在の年収は1億円超。私の顧客の1人である。

その小笹会長は、本業とは別に、ふたつのスーパー銭湯を経営している。

いきさつというのは、こうだ。

最初は、スーパー銭湯ではなく、若い社員が中心になって、富裕層向けのマンションを建てる計画が進んでいた。各部屋に露天風呂があるような豪華なマンションだ。

ところが、計画を進める過程で採算がとれない可能性が高まった。とはいえ、若い社員たちが計画し、力を入れてきたプロジェクトである。どうしたものか考えあぐねていると、彼らが「スーパー銭湯なら、利益を出す自信がある」と言い出した。

「それなら、スーパー銭湯を徹底的に研究しろ」と、スーパー銭湯巡りをさせることにした。はじめは、彼らもただ楽しんでいるように見えた。だが、そのうち「成功させなくては」とやる気に火がついたらしい。

フタを開けてみると、完成したスーパー銭湯は、1年目から黒字となっていた。

だが、小笹会長にとっては、スーパー銭湯を経営する目的もまた、若い社員たちに新しい活躍の舞台を与えるためである。つまり、小笹会長には、何を買うかというよりも、何のために買うかという哲学があるのだ。