私自身、人に関心があり、人の話を聞くのが好きだ。だから、人と飲んだり、人にご馳走したり、ときには進んでバカをやることで、人を喜ばせようとする。若いときには、上司に喜んでもらうために率先して裸踊りをしたり、いまでもお取引先の前で、火をつけた花火を口に加えるといった余興を披露する。
実際、私の周りで稼いでいる人を見ても、人に関心がある人が多い。しかし、これは当然といえば、当然のことなのだ。社会の仕組みをつくったのは、結局は人であり、稼ぎは人が運んでくるものだからだ。
経営者や人の上に立つリーダーであれば、関心をもつべき相手には、社員やスタッフも含まれるだろう。松下幸之助が、「社員は家族」だとして、世界恐慌時、多くの会社が倒産するなかで、社員を誰ひとりとして解雇しようとしなかった話は有名だ。社員が会社に大切にされている実感をもてば、会社に対する愛情も生まれ、結局は業績向上にもつながる。
一方で、部下が最初に関心をもつべき相手とは、上司である。繰り返し触れてきたように、仕事を評価するのは、まずは上司だ。上司に好かれなければ、与えられるチャンスも減る。それには、上司のことを知るのが第一歩である。ところが、稼ぐことができない人の多くは、自分のことにしか関心がない。そのため、上司のことをもっと知ろうとか、上司の価値観に合わせて仕事をしようという意識が薄いのだ。
だが、多くの場合、社会に出て最初のいちばん身近な相手とは、直属の上司である。その相手に関心がもてないというのは、社会人として残念といっていい。
上司に限らず、相手に関心をもつには、まずは相手を好きになることだ。それには、相手の悪いところではなく、よいところを探す努力をすることだ。
もう20数年前、私の知人が社会人になりたての頃の話だ。どうしても直属の上司が好きになれず、父親の前で上司の欠点をあげつらったことがあった。そのとき商売をしていた父親から、次のような言葉で諭されたそうだ。
「人というのはミカンと同じだ。全部が食べられるわけではなく、皮やタネもある。お前は、ミカンの実の部分だけを見るような人間になりなさい」
相手のよいところだけを見れば、やがて、応援してもらえる人になり、社会から引き上げられる。この父親は商売人としての体験から、稼ぎにつながる世の中の仕組みを、このような言葉で伝えたのだ。
【年収1億を生む黄金則】相手のよいところを探すことで、相手を好きになる努力をする。
(※『プロフェッショナル ミリオネア』(プレジデント社刊)第2章「学ぶ、人にあげてもらう」より)