不運をチャンスに変えられる人とは、どのような人だろうか。

東海地方で医療法人を経営するY理事長の年収は1億7000万円。そのY理事長から聞いた話をお伝えしよう。理事長の専門分野でもある「扁桃核」に関連する話だ。

扁桃核とは、脳の中央部に位置する器官で、私たちが何かを見たり聞いたり、感じたりしたときに、それが好きか嫌いか、快か不快かを瞬時に判断する役割をもっている。そして、人間は、ほとんどこの扁桃核の判断で行動している。

たとえば、私たちがある絵画を見て心地よいと感じたとする。なぜそう思ったのかと聞かれると、いろんな理由を答える。「淡い色合いが好きだ」とか、「モチーフが好きだ」といった具合だ。ところが、そうした理由はぜんぶ嘘なのだそうだ。

これには、扁桃核の隣に位置する海馬との関係がある。

海馬は記憶を司る器官で、ここには過去の体験などのデータが収められている。

この海馬と扁桃核は、相互に影響し合っている。扁桃核は好き嫌いや快不快の感情を海馬に伝え、海馬がそれを記憶する。海馬には、かつて見て心地よいと感じた絵のデータも蓄積されているのだ。

そして、私たちがある絵画を見たときに、海馬はかつて見た同じような絵の記憶をたぐりよせ、それが心地よかったことを、扁桃核に伝える。それによって、快不快を扁桃核が一瞬で判断する。

つまり、快か不快かは、見た瞬間に決まっているのである。だから、その絵画がなぜ心地よいかという理由をいくら述べたところで、それらはじつはすべて、あとづけされたものにすぎないのだという。