成長のヒントはサービス事業にあり
もちろん、そう簡単にはいかないかもしれない。成功への活路は当グループが抱える国内約2000万人の顧客である。契約形態も千差万別でロイヤリティの高い固定層もいれば、たまたま加入した任意保険が損保ジャパン日本興亜の自動車保険だったというお客さまもいるはずだ。仮に、2000万人のお客さまの半分、1000万人が「このサービスなら年間1万円を支払ってもいい」と思ってくれる商品やサービスを提供できれば、それだけで1000億円になる。私はそこに“成長のヒント”があると考えている。
すでに、成長戦略を具体化するためのいくつかのサービス事業を開始している。例えば、グループ会社にはメタボリックシンドロームに関する保健指導などで実績のある全国訪問健康指導協会という会社がある。ここでは、わが国最大規模となる約1100人の保健師・看護師・栄養管理士のネットワークで、年間10万人のメタボ検診など健康支援サービスをしており、保険事業との親和性も高いといっていい。
海外戦略においては、中国の上海汽車工業販売社との合弁事業で自動車整備事業の会社を2016年夏以降にスタートさせる予定だ。私たちには自動車事故時の保険査定などで蓄積した自動車修理や板金の技術があり、まさに匠のような社員もいる。そうしたノウハウを、新車販売台数が2000万台超の中国市場に持ち込む。そして、この事業そのもので収益を上げ、さらに周辺にも事業を広げる。
もちろん、今後もコア事業は国内の保険事業であり、当面リスクを軽減していくビジネスがターゲットになると思う。というのも当グループは“リスクの専門家”として、新技術の普及に伴い想定される新しいタイプのリスクを認識しつつあるからだ。例えば、期待される新技術には自動運転技術とか介護ロボットなどがあるが、これらの素晴らしい技術の普及を支援していくためにも的確に対応していかなければならない。
そのためには、全体の総合力はもとより、ビジネスモデルによっては、アライアンスや部分的連携などの選択肢も有効だろう。お客さまに対してグループ全体またはパートナーとともに安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供していくことによって、将来、提携企業のカスタマーも私どもの潜在的な顧客になっていただけると信じている。
1956年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、安田火災海上保険入社。2010年に損害保険ジャパン社長に就任、2014年9月より損保ジャパン日本興亜会長。12年より日本興亜損保との持ち株会社NKSJホールディングス(現・損保ジャパン日本興亜ホールディングス)社長を兼任。