――昨年4月、日本興亜損保は損保ジャパンと経営統合し、NKSJホールディングスが誕生しました。日本火災と興亜火災の合併からちょうど10年。6月、日本興亜損保の社長に就任した二宮さんは、これまでをどう総括しますか。
保険事業にとって多くの課題が顕在化した10年だったと思います。まず株式市場の大幅下落などの影響もあり、赤字決算となった年もあり、台風や集中豪雨の多発、東日本大震災の発生という自然災害の大規模化にも見舞われました。また損害保険に限りませんが、保険金の不払いや支払い遅延問題も発生しました。
こうしたことに対して、リスク管理の高度化や内部統制を厳格化するのは当然ですが、そのうえで、お客様目線の徹底という基本に立ち返る必要があると感じています。保険業界はもともと規制業種でしたから、マーケティングやお客様ニーズの把握は不得手なほうです。しかし今後は、お客様の信頼を得てはじめて成長を語れるのだ、ということを肝に銘じていきたいと思います。
――東日本大震災に際しては、現地へ約700人の社員を派遣するなど大規模な支援体制を敷きました。
私たち保険会社や代理店にとって、今回ほど保険事業に携わっていることの役割、使命感を強く意識したことはなかったと思います。みんなが日常的な業務の範疇を超えて工夫をし、努力をしてくれました。それによって会社の総合力が向上し、また保険金の支払いが早く進んだことで、お客様からの評価が高まるという好循環が起きました。
社員は自ら手を挙げて被災地入りし、受付、書類整理、損害調査の3種の仕事に当たりました。スタッフ部門の社員や部長クラスまで志願しました。彼らは帰ってくると、口々に「行ってよかった」「保険会社の仕事をしていてよかった」と感想を述べます。未曾有の災害にあって、われわれの存在意義、プロ意識が再認識させられたのは大きな出来事でした。
保険会社にとって人材は経営の柱です。市場が右肩下がりになるなかで、個々の社員が持てる力を発揮し、さらに伸ばしていくことができれば会社の成長につながります。辛いことのほうが多かったとはいえ、震災の体験が人材の力を強化するきっかけになればと考えています。
震災後の早い時期に事故受付センターを大阪、地震保険支払集中センターを東京・日本橋にそれぞれ設置しました。それと現地災害対策本部との連携が奏功しました。また、被災地で起きた一般の交通事故を被災地以外の損害サービスセンターで処理したことも、支払いを早めるうえで効果的でした。