「買え買え詐欺」は世界的名著のメソッド

昨年度の特殊詐欺(振り込め詐欺含む)の被害総額は過去最大の数字を示しているが、なかでも、「買え買え詐欺」による被害は深刻である。

これは、架空の未公開株や投資の権利を販売する売り手側と、「その権利を高値で買い取りたい」という買い手側の業者、双方から電話をかけて、消費者に購入をそそのかし、金を騙し取る手口である。

例えば、こうだ。

高齢男性のもとに、投資会社から「上場予定のA社の未公開株が購入できます」というダイレクトメール(DM)が送られてきた。その後、証券会社を名乗るところから「A社の未公開株の購入権利を持っている人を探している」という電話が入った。

そこで、男性が自らの元にそのDMが来ていることを伝えると、業者の男は「それはすごいことだ!」と驚嘆の声をあげ「そのDMは地域限定の選ばれた人にしか送られてきてないもので、その株を買える権利があるなんて、すばらしい」と言う。

さらに証券会社を名乗る男は「ぜひとも株を買って、当社に売ってほしい。高値で買い取る」と言ってきた。高齢男性は突然の儲け話には半信半疑だったため、一端、電話を切った。

しかしその後も実在する証券会社など、複数の会社から電話がかかってきたため、男性は本当に儲かる話だと信じ込んでしまった。

そして男性は「購入価格の3倍で買い取る」といってきた証券会社を名乗る業者に株券を売る約束をしてから、投資会社に未公開株の申し込みをした。

数日後、高齢男性宅にやってきた男に100万円ほどを払うと、投資会社名義の預かり証が手渡された。そして後日、株券が郵送されてきた。この株券は全くの偽物であるが、高齢男性は本物と信じて、大切にしまっておき、買い取り業者からの電話を待った。

それからしばらくして、「買い取る」と言っていた業者から電話があった。しかし業者の男は「急に『株を買う予定だった相手が購入しない』というキャンセルの電話が入ってしまった。申し訳ありません」と言う。

落胆している男性に業者の男はさらなる提案をする。「株券の量が多ければ、買い手は見つかるはずです」と株の買い増しを促した。すでにお金を払っている男性にとって、後にはひけない状況になっているため、業者の言葉を信じて、さらなる金を支払って、株を購入した。この手口を何度も繰り返されて、被害金額は数千万円にもなってしまった。

こうした買え買え詐欺の題材となるものは、未公開株だけでなく、ダイヤモンドの購入権利やシェールガスといったエネルギー開発権利、国内での換金が難しい外貨取引などもある。