「好きなことをしていいから謙虚であれ!」
そうしたなか、コンダクターとしての経営トップの役割とは、企業ブラントと商品ブランドを、時代にフィットさせることにつきます。市場の変化が少なければ、タクトの振り幅は小さくていいのですが、大きければ振る幅だけでなく、振り方も変えなければいけない。しかも、市場の変化はキーワードの掛け算で動きます。ですから、トップの舵取りの難度は間違いなく増していると自覚しなければなりません。
当社としてもここは大事な踏ん張りどころでもあります。というも、キリンビバレッジの販売シェアが2011年に業界5位に落ちているからです。もちろん、3、4位とは僅差で“3位グループ”と呼んだほうがいいかもしれません。けれども、その差は商談の場でも順番などに如実に表れます。
そこで、私の社長就任を機に、再度気持ちを引き締めたいと考えました。「夢は大きく」持たなければなりません。ただ、当面は単独3位奪取を目標に、キリンらしい、キリンでなければできないことは何かを突き詰めていきます。
社員にいいたいのは「好きなことをしていいから謙虚であれ!」と。
マーケティングの世界では“千三つ”という言葉が使われますが、これが何を意味するか。答えは新商品1000のうち、翌年まで生き残るのはせいぜい3つという生存競争の厳しさを表現しているのです。商品開発という仕事は、消費者の好意を得るための闘いともいえます。そこには、絶対に驕りがあってはなりません。キリンビバレッジの社内風土、そして文化を醸成していくのもトップの大切な役割です。
佐藤章(さとう・あきら)
1959年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。82年キリンビール入社。97年キリンビバレッジ商品企画部主任。2007年キリンビール営業本部マーケティング部長、11年九州統括本部長、12年キリンビールマーケティング執行役員九州統括本部長を経て、14年キリンビバレッジ社長に就任。
1959年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。82年キリンビール入社。97年キリンビバレッジ商品企画部主任。2007年キリンビール営業本部マーケティング部長、11年九州統括本部長、12年キリンビールマーケティング執行役員九州統括本部長を経て、14年キリンビバレッジ社長に就任。
(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)