飲料市場は7年間でどう変わったか

佐藤章・キリンビバレッジ社長

この春、私はキリンビールマーケティング執行役員九州統括本部長からキリンビバレッジの社長に就任しました。1997年から商品企画部へ出向していた時期がありますから、7年ぶりに戻ってきました。最初の出向時は、缶コーヒーの『FIRE』、『生茶』、『聞茶』、そして機能性飲料『アミノサプリ』といった新ブランドを手がけました。これらは販売初年度実績で、いずれも1000万ケースを突破するなど、現在でも私どもの主力商品となっている商品を開発することができました。

7年ぶりに現場を見て、あらためて脳裏に浮かんだのが“不易と流行”という言葉。清涼飲料でいえば、コーヒーやお茶、スポーツドリンクといった商品構成には大きな変化はないのですが、マーケットの実態は様変わりしています。

例えば、これまでは当社商品を売ってもらっていたコンビニエンスストア。ここがコーヒーを店頭販売し、缶コーヒー対レギュラーコーヒーという構図ができあがりました。かつての得意先がライバルになったわけです。と同時に、コーヒーユーザーのすそ野を広げていく同盟軍といってもいいでしょう。

同じことはドラッグストアにも当てはまります。実は、缶コーヒーの手売りが増えているのです。結果、私が清涼飲料の商品企画担当となった当時は、販売量の自動販売機構成比が半分あったのですが、いまでは30%台に落ち込んでいます。もうひとつ、つけ加えると、トクホ(特定保健用食品)の台頭も見逃せません。日本人の飲料などの選択要件が、より健康志向になってきました。このように、ここ数年間のキーワードは、(1)コンビニ、(2)手売り、(3)健康志向だととらえています。

激変しているとはいえ、市場のメガトレンドはなく存在し、現在の消費行動は二極化しています。お茶やスポーツドリンク、ミネラルウォーターといった大衆商品とコーヒー、紅茶と野菜ジュースなどの嗜好品に分けて考えると、それがよく理解できるでしょう。

前者は、味と価格で勝負が決まるので、みんなが「いい」という「半歩先」のマーケティング、後者は感性の高いユーザーの心理に訴える「一歩先」の戦略を仕掛けていきます。