2008年12月期に売上高2兆円を突破したキリンHDがトップを走り、1兆円台半ばでサントリーHDとアサヒビールが競り合い、味の素と日本ハムが1兆円企業を実現していたところに、明治乳業と明治製菓の経営統合(明治HD)でさらにもう1社、1兆円企業が誕生した。
マルハグループとニチロの統合会社であるマルハニチロHD、不二家や東ハトを傘下に収めてきた山崎製パンの2社が、1兆円台を目指す。売上高1兆円を軽く突破しながら不祥事で会社解体の危機を招き、そこから復活してきた雪印乳業も、一度は手放した牛乳事業の日本ミルクコミュニティと経営統合し復活にかける。
7兆円に迫る売上高のJT(日本たばこ産業)も、冷凍食品の加ト吉を傘下に収めるなど、食品事業を4000億円台にまで育成してきた。
主な提携関係は、キリンとヤクルト本社、アサヒとカゴメ、味の素と伊藤ハム、サッポロHDと丸大食品……。
以上が食品業界の大まかな勢力図だが、売上高が10兆円を超すスイスのネスレなどの海外勢も含めて、主導権争いが熾烈を極めている。
国内の食品関連会社にとって、持続的成長実現の鍵は海外での展開拡大。ここにきて活発な動きを見せているのがビール各社だ。キリンはおよそ5000億円での買収提案を拒否されるという案件もあったが、豪州第2位の乳業事業会社の買収や、フィリピンのビール会社への出資を決めている。サントリーは、ニュージーランドの清涼飲料会社を買収。アサヒは、豪州で買収を手がけたほか、中国の青島ビールへの出資や、ロシア最大手のビール会社、バルチカとの提携にも動いている。
アジア・オセアニアを中心に展開しているビール各社とは対照的に、文字通り世界規模なのが味の素やヤクルト本社。味の素のうま味調味料(「味の素」)は、ラテンアメリカやアフリカでも販売が伸長。ヤクルトはヤクルトレディによる販売方式を含めて展開している。乳製品をメキシコでは1日に300万本超、ブラジルでも130万本ほど売るまで成長している。
食品各社にとってもう一つの気がかりは米投資ファンドのスティール・パートナーズ。スティールは、一時は14%以上保有していた江崎グリコについては、昨年12月までに全株を売却した。日清食品HDへの出資比率は減少しており、株価低迷で投資先の選択と集中が進みそうだ。