4月、元社員の逮捕者を出したベスト電器。郵便料金割引制度を悪用し、同社のダイレクトメール158万通を発送、正規の郵便料金との差額2億円弱を不正に免れたという嫌疑によるものだ。2009年2月期の連結決算で、2期連続の最終赤字だった同社にとって、痛手は小さくない。単体ベースではどうにか営業利益を確保したものの、その額は2400万円にすぎなかった。

そもそも、家電量販店各社の売上高営業利益率は、高くはない。業界トップのヤマダ電機でも3%台。10万円の薄型テレビを販売して3000円の営業利益があれば上々といったところだ。

かつての業界トップ、コジマが多店舗展開を開始したのは1972年。量販専門店として最初に売上高1兆円を実現したヤマダ電機のスタートは83年。以来、家電量販店各社は家電メーカーの系列店やスーパー・百貨店から顧客を奪い、6兆円から7兆円にまで市場規模を拡大。今やヤマダ電機は、セブン&アイHD、イオンに次ぐ小売り3位である。こうした市場拡大の経緯は同時に、激しい業界内の合従連衡の歴史でもある。

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業界別再編戦国マップ

結局、ベスト電器はビックカメラの関連会社に入ることで一応決着、両社は4月に合弁で新会社「B&B」を立ち上げている。

そうなると今度は、ビックカメラとの資本業務提携打ち切りに動かざるをえなくなったエディオンの動向に注目が集まるのは必然の流れ。エディオンとビックカメラは当初、経営統合協議の開始で合意、その後、資本業務提携関係に落ち着いた経緯がある。業界2位ながら関西が基盤のエディオンにとって、首都圏を中心とする東日本での店舗網整備は急務。M&Aに動くとしても、残された大手は限られる。東京が拠点のヨドバシカメラ、本店を茨城県に構えるケーズHDの思惑はどうか。

ヤマダ電機のぷれっそHD(傘下にマツヤデンキ、サトームセン、星電社)買収やベスト電器によるさくらや買収は、いずれも投資ファンドの介在案件。現在、投資ファンドが大株主の上新電機やラオックスの動向にも注目しておきたい。

(ライヴ・アート=図版作成)