パナソニックの一員では世界で負ける

私がテラモーターズに転職したのは一昨年のことです。パナソニック・エナジーでの仕事は面白かったのですが、同年代の同僚がまったくいない職場に物足りなさを感じて……。タンザニアでの日々はとても楽しかったです。その気さえあれば毎週サーフィンやダイビングもできましたしね。でも、工場はパナソニックが将来のアフリカ展開の足掛かりをなくしたくない、という程度の理由で置かれているように私は感じていました。そんななか、大元のパナソニックの業績が思わしくなくなってくると、自分はこのままでいいのだろうか、と不安になってきたんです。

アフリカに行って驚いたのは、日本以外のアジア企業の異様なまでの勢いでした。サムスン製の商品が溢れていて、道路にはタタの自動車がたくさん走っている。アフリカでは「グローバル化」の流れを肌で感じられます。1カ月もすれば商品が入れ替わり、そこに中国や韓国の安い商品がすごいスピード感で出回っている。その中で日本企業のプレゼンスってぜんぜんないんです。せいぜいトヨタのハイエースやSUVの中古車を見かけるくらいで、自分がパナソニック・グループの一員として働いていても、製品を安くたくさんつくるというコモディティ化の世界では勝ち目がないのは明らかでした。

私がグローバル採用に応募したのは、アフリカでいきなり管理職になれるという環境に身を置くことが、自分を鍛えることにつながるという思いがあったからでもありました。ただ、現実には日本人社員は現地で採用した人たちの教育係に過ぎないところがあって、競争というものがないんです。タンザニアでの生活に慣れ、仕事にも慣れてくるとそのことに気づき、物足りなさを感じるようになりました。