累計なんと540万部!

わずか1000部でスタートした無名の著者による自費出版本が、たった1年半で、夢のような超ベストセラーに変貌した。2008年のランキングで『夢をかなえるゾウ』に続く2位(出版ニュース社調べ)を獲得した『B型自分の説明書』だ。

内容はシンプルそのもの。行間をたっぷりとった、横組み・個条書きの文章で「血液型がB型である自分」の性格や行動を述べるだけ。分量も120ページほどと、ごく薄い。ところがこの本、自費出版大手の版元・文芸社によると、発売(07年9月)以来の累計部数は36刷165万部に達し、続く『A型』135万部、『AB型』92万部、『O型』148万部を合わせると、シリーズ540万部という記録的な部数を売りつくした。

著者Jamais Jamais(じゃめじゃめ)さんがこの本の企画を携えて東京・新宿にある文芸社を訪れたのは、06年暮れのこと。「150万~200万円の予算で1000部を刷り、全国300の提携書店に300部を配本する」(担当編集者の壁谷卓・文芸社第二編集部編集長)というのが同社の自費出版・標準プラン。じゃめじゃめさんも、このプランでの出版を依頼した。そのときの目標は「かかった経費くらいは回収したい」(壁谷氏)。

だが「出すからには売れる本にしたい」と考える壁谷氏は、徹底的なサポートを行った。たとえば、当初案では著者自身による脱力系のイラストを数点だけ使う予定だったが、絵の魅力に着目した壁谷氏は「もっとたくさん描いてください」とアドバイス。本文中の絵の点数を増やしたほか、売れ行きを左右するオビの部分にも著者のイラストを使用した。

もっとも、いくら内容や装丁がすばらしくても、それだけではベストセラーにはならない。この本の場合も次のようなきっかけがあったという。

「山形のとある書店員さんが『B型自分の説明書』を読んで、いたく共感されたそうなんです。この方もB型だそうですが(笑)、発売直後に追加注文をして平積みにしたら面白いように売れ始め、そのことがネットで紹介されると、今度は名古屋など各地の書店にも人気が飛び火しました。私自身、驚くようなスピードでした。決定打になったのは、08年2月ごろテレビ番組の『王様のブランチ』で取り上げられたことですね」(壁谷氏)

それにしても、540万部である。著者の取り分はいくらになるのか。

「増刷分は印税契約ですから、軽く億単位になるでしょう」と壁谷氏はいう。定価1000円の1割と仮定すると、著者が受け取る印税は5億4000万円!

渦中のじゃめじゃめさんは、ベストセラー作家になったいまも詳しいプロフィールを公開していない。プロ作家に転身することもなく、本業の仕事を淡々と続けているそうである。