英国とカナダも担当高官を置いた
圧力や譲歩の選択には、複数の役所を動かす調整が欠かせない。英国やカナダも、解決が難しい拘束事件を扱う高官を置いている。
英国政府は2026年7月の任命発表で、複雑な海外拘束事案を担う初の特使を置いたことを明らかにした。特使の職務規程には、外相が指定した案件について、領事・外交・法執行などの担当者を集め、方針や危険性を検討し、家族と連絡する役割が定められている。政府として正式に約束する場合は、大臣の承認が必要だ。
カナダも2023年11月に人質問題担当高官を置いた。カナダ政府の制度説明では、家族との連絡や被害者への支援、外国との連携が担当高官の役割として挙げられている。領事分野などの幹部が兼務している。
米英加の制度はそれぞれ異なる。解放交渉における省庁間の調整役を明確にしている点は、日本も参考にできるポイントだ。
日本も「外国人4人の資産凍結」をしたが…
日本にも資産凍結という手段はある。では、邦人拘束への対応に使うには何が必要なのか。外国人個人に科した制裁の前例から考えたい。
外務省が2024年7月に公表した資産凍結等の措置は、ヨルダン川西岸で暴力行為に関与したイスラエル人入植者4人を対象にした。外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、支払いや預金契約などを許可制にする措置である。
ただし、この前例をそのまま邦人拘束に当てはめるには、法的な検討が要る。財務省が解説する外為法上の発動要件には、国際約束の履行や、国際平和のための国際的努力への寄与などがある。日本の平和・安全の維持を理由にする場合は、対応措置が特に必要だとして、その実施を閣議決定する必要がある。
入植者への制裁は、国際平和のための国際的努力に寄与するという理由で実施された。邦人拘束でも、どの要件に該当し、誰のどの行為を対象にするか、政府が根拠を示す必要がある。個人を制裁できる法律があることと、個々の拘束事件に適用できることは区別すべきだ。

