「不当拘束の認定」から「解放交渉」まで特使が主導

制裁だけが米国の対応ではない。相手国の裁判とは別に、拘束が不当かどうかを判断する制度もある。

米国では、2020年成立のレビンソン法に由来する現行連邦法に基づき、国務長官が拘束の不当性を審査する。考慮事項は11項目。米国籍を理由とする拘束か、米政府から政治的・経済的譲歩を得る目的があるか、司法の独立性や公正な手続が確保されているか、といった点である。

同じ連邦法は、不当拘束と認定した案件を領事局から人質問題担当大統領特使へ速やかに引き継ぎ、14日以内に議会へ通知するよう定めている。特使は解放に向けた外交交渉を調整し、家族への情報提供も担う。

相手国が有罪判決を出していても、米政府は拘束を不当と判断できる。その判断を受けて、対応は人質問題担当大統領特使へ引き継がれる。不当拘束の認定と制裁の発動は別の判断だが、認定後に誰が交渉を担うかは定まっている。

アメリカ合衆国
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米国は「同盟国にも受刑者」の釈放を求めた

米国は制裁という手段を持ちながら、解放のために相手への譲歩も選んだ。

バイデン大統領は2024年8月1日の発言で、対ロシアの多国間囚人交換によって、米国人3人と米国永住者1人を含む16人が解放されたと明らかにした。

このときドイツは、ベルリンでの殺人で終身刑を受けたロシア人を釈放した。ロイター通信の報道は、ロシアが2022年から、この受刑者と米国人の交換を米側に提案していたことを伝えている。しかし、米国にはドイツの受刑者を解放する権限がない。2024年1月、バイデン氏がショルツ独首相に直接協力を求めた。

中国との間でも交換が行われた。ニューズウィーク日本版掲載のロイター記事は、2024年11月に米中が双方3人ずつを釈放したと報じている。米政府は、中国での拘束を不当と認定していた米国人全員の解放を発表した。

米国も、制裁だけで自国民を取り戻したわけではない。対ロシアの囚人交換では、相手の要求を見極め、同盟国に重大な譲歩を求める調整まで必要だった。

圧力と譲歩を組み合わせた交渉には、相手に利益を与えることで、次の拘束を誘発する危険も伴う。本人を一刻も早く取り戻すことと、将来の拘束を防ぐことの両方を考え、政治指導者が決断する。