日本政府が釈放を求めても解決できない壁
日本政府が釈放を求める際、最初に直面するのは拘束理由を把握する難しさだ。中国の国家安全に関する事件では、その理由が外から見えにくい。
外務省の海外安全情報は、国家秘密などとされる文書やデータを取得・保有しただけでも、スパイ行為とみなされる恐れがあると警告している。何が国家秘密に当たり、どの行為が処罰されるのかを、外国人が事前に見極めるのは難しい。
アステラス社員の事件でも、外務省はさきほどの会見で、拘束理由などの説明が不十分だと指摘している。証拠や法の適用が外部から検証しにくければ、どこに問題があるのかを示して是正を迫ることも難しくなる。
外務省の邦人援護案内には、本人の健康確認や家族への連絡、弁護士情報の提供といった支援が挙げられている。政府は首脳・外相級でも釈放を求めている。こうした領事支援や外交交渉は、拘束下の本人を支える重要な仕事である。
ただし、面会や待遇改善と、身柄の解放は別の問題だ。適正な司法手続がとられている場合、国籍を理由に特別扱いを求めることにも限界がある。日本政府に相手国の司法手続を変える権限はなく、解放に応じるよう外交交渉で働きかける。相手が拘束を外交取引に使う場合には、釈放要求を繰り返しても、拘束を続ける利益が残る。
個々の事件が取引目的かどうかは、証拠に基づく検証を要する。そのうえで、不当な拘束と判断したとき、相手が解放を選ぶよう、どこまで働きかけられるかが問われる。
米国は「拘束に関与した組織や幹部」を制裁
拘束を続ける相手への働きかけとして、米国は関与した組織や幹部を制裁対象に指定し、資産凍結や取引制限を行っている。
米財務省が2023年4月に発表した制裁は、ロシア連邦保安庁(FSB)とイラン革命防衛隊情報機関、同機関の幹部4人を対象にした。人質拘束や不当拘束に対処する大統領令14078号に基づく初の制裁である。
対象者の資産のうち、米国内にあるものや、米国人・米国法人などが保有・管理するものを凍結する。例えば、幹部が米国の銀行に預けた資産も対象になる。対象資産に関わる米国人などの取引や、米国を経由する取引も原則として禁止する。
外国政府に釈放を要請するだけでなく、拘束に関与する組織や幹部を名指しして、資金を動かしにくくする措置である。ただし、従来から別の理由で制裁を受けていた対象も含まれる。今回の指定で対象者の負担がどれほど増えたかは、別に検証が必要だ。

