英語の勉強で“トランプ節”はやめたほうがいい

発言の中身はともかく、それほど大衆の心をつかむわかりやすい英語なら、英語学習のお手本にしてもよいのではないか――そう考える人もいるかもしれない。

リンカーンのゲティスバーグ演説やケネディの就任演説など、アメリカの歴代大統領の言葉を、日本人はしばしば英語のお手本にしてきた。だが、トランプ氏の英語をお手本にするのはやめたほうがよさそうだ。一見わかりやすくても、アメリカの一般市民がプライベートの日常会話で使うような俗語表現が多く、英語がネイティブではない日本人が使いこなすのは容易ではないからだ。たとえば今年10月14日のSNS投稿で、トランプ氏はイエメンの反政府勢力フーシ派に対して米軍が昨年爆撃を行ったことを指摘してこう書いている。

I thought they learned their lesson a year ago when we bombed the HELL out of them and, at their request, stopped.
(1年前に我々が徹底的に爆撃を行い、彼らの要望で停止した時に、彼らは思い知らされたと考えていた)

文中のthe HELL out ofは「徹底的に」とか「強烈に」という意味のスラングだが、日本の学校で英語を学んだ人にとっては意味はわかっても自分からは使いにくい表現だ。ましてや、dumb、scumといった人を貶める俗語表現は英語をネイティブとしない外国人は使わないほうが無難だろう。

スラングは無理して使うものではない

筆者は仕事や留学でアメリカに10年近く住んだが、英語を話すときには、いわゆる四文字言葉のような卑語はもちろん、the hell out ofのような俗語的表現も使わないようにしている。どちらかと言えば、日本の教科書で学んだような多少堅苦しい表現を意図的に使うよう心掛けている。幼少期を英語環境で過ごすなどしてネイティブの英語が身についていない限り、外国人が無理して俗語や口語的表現を使おうとすると、かえってネイティブスピーカーの相手に違和感を与えてしまうことを身に染みて経験しているからだ。

もっとも、英語の習熟度は人によってさまざまで、ごく短期間英語を学んだだけで、ネイティブスピーカー並みにスラングを使いこなすようになる日本人の若者もいるので、俗語は使わないほうがいいと一概には言えない。ただ少なくとも、「わかりやすいから」という理由だけでトランプ氏の英語をそのまままねるのは避けたほうがいいだろう。

アメリカ人も、トランプ氏のように日常生活で使っているカジュアルな表現で市民に語りかけてくる政治家と、ハーバード・ロースクール出身で憲法学の大学講師だったオバマ氏のように折り目正しい演説をする政治家と、どちらに耳を傾けるべきなのか迷っているのかもしれない。深刻化するアメリカの分断に指導者の言葉使いも一役買っていると思うのはうがちすぎだろうか。

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