「トイレに行かないで」

党大会の演説では、トランプ氏はこんな発言もした。

“So please, if you don't mind, don't anybody go to the bathroom…”
(頼むから、もしよければ、だれもトイレに行かないでください)

この前段で、トランプ氏は、「フェイクニュース(メディア)のやり口を知っていますか。会場でだれかがトイレに立っている間に空いた席の写真を撮って、トランプの演説会場は満席になっていないと報じるんです」と話しており、そのうえでの発言だ。あまり気の利いたジョークではないが、トイレで席を空けるかどうかというこれまでの大統領ではありえない卑近で具体的な発言を通じて、会場の共和党員は大笑いして「フェイクニュースメディア」に対する敵意を共有していた。

党大会の演説は大統領演説の中でも熱のこもった格調高い演説となるのが通例だが、トランプ氏はあえて格調よりもメッセージの伝わりやすさ、わかりやすさを選んだといえる。

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「無能」よりもストレートに「ばか」と言う

自分自身の言葉使いについて、トランプ氏は、対立している人や陣営を批判する際に、「以前はincompetent(無能な)と言っていたが今はstupid(ばか)と言っている。私はアイビーリーグの大学出身で言葉はよく知っている。しかし、stupid以上に適切な言葉はない」と述べたことがある。外交交渉に関しても、contractやagreementではなく、好んでdealを使うのも、同様だろう。

トランプ氏はMAGA(Make America Great Again)運動などを通じて、相対的に所得が低く大学卒の割合も高くない白人労働者層の支持を掘り起こし、岩盤支持層とした。トランプ氏は、抽象的で難解な単語を使わず、平易でストレートな言葉使いで、意図的に単純化した内容のメッセージを発信することにより、そのような人たちを熱狂させることができるとわかっているのだ。

とりわけ、敵と味方を峻別して、味方を最大級の形容詞で褒め上げる一方で、敵を汚い言葉でレッテル貼りをして罵倒することにより、支持者は敵のどこが悪いのか納得する以前にトランプ氏の言葉にうなずいてしまうこともあるのではないか。トランプ氏が演説やSNSで敵視する相手につけたあだ名をいくつか紹介しよう。名前のもじりや形容詞をかぶせるなど手法はさまざまだが、どれも相手に対する味方の敵意を高め、相手をいやな気持ちにさせるのは間違いない。