発端となった学生の不満
フランスでは定期的に大規模なデモが発生し、それに乗じた略奪行為が横行する。9月以降のデモの発端は、教育サービスの質の劣化を憂いた学生にあったとされる。フランスの公立学校は軒並み老朽化しており、また近年の高温に耐えうるような空調設備も存在しない。教職員の給与水準も極めて低く、人材が集まらないとも言われる。
では、フランス政府による教育関連負担費は本当に少ないのだろうか。それを確認するため、欧州連合(EU)の統計局(ユーロスタット)が公表する財政統計を用いて、フランスとドイツの両政府が支出する教育関連負担の推移を確認してみた。物価変動の影響を除去する際には、消費者物価の「教育サービス価格」を用いて調整を行っている。
そうすると、ドイツの指数が順調に上昇していることに比べて、フランスの指数はむしろ水準が低下していることが分かる。こうした動きの差からは、確かにフランス政府による教育関連負担が不十分であった可能性が意識される。事実、年金支出の急増でフランス財政は逼迫しており、教育費を十分に積み増せていないという指摘もある。
他方で、こうした公立学校の荒廃を嫌気した家庭が、富裕層を中心に、子弟を私立学校に進学させるケースが、この15年ほどで急増しているようだ。フランスの教育サービス価格指数(≒私立学校の学費)の水準も、そうした“私学熱”がけん引する形で、急上昇しているように見受けられる。このトレンドもまた、ドイツより急激だ。
とりわけフランスでは、高等教育における学費の高騰が目覚ましいようだ。フランス社会でエリートになるためには、大学とは別にグランゼコールという高等教育機関を修了する必要がある。公立のグランゼコールもあるが、INSEADやHEC Paris、ESSEC Business Schoolといった私立の商業系グランゼコールの学費は10万ユーロ(約1800万円)を超えることもある。



