改革は進まず、国民の不満は募るばかり
繰り返しとなるが、フランスでは定期的に大規模なデモが発生する。今回は学生のデモがエスカレーションしていく過程で、政情不安が折り重なったため、事態が複雑化したと言えよう。今後も、また何かがきっかけとなって、フランスでは破壊や略奪を伴うデモが生じるだろうが、事態は今回よりもさらに複雑化するかもしれない。
そもそも、フランス国民の不満は様々な面で渦巻いている。一方、それはフランス経済の“過剰規制体質”に基づく低成長に起因するところが大きい。それを打破しようと改革を主張したマクロン大統領を、フランス国民は信託した。しかしマクロン大統領が進めようとした改革に待ったをかけ続けたのも、結局のところフランス国民だった。
改革が先送りされる過程で、フランスの病理は着実に深刻化した。政情不安もその一環だ。いずれにせよ、フランスという国そのものの在り方が、大きな岐路に立っているように見受けられる。その象徴が、今回のデモだったと言えるのではないか。いわゆる“銀の弾丸”のような妙薬があるわけでもなく、身動きが取れないのが今のフランスだ。
こうした視点から見ると、今回の出来事が、現状、来年の大統領選の最有力候補となっているRNのル・ペン氏の追い風になるかも定かではない。ル・ペン氏が主張する移民・難民政策の厳格化やウクライナ支援の見直しを図ったところで、フランスという国そのものの抜本的な構造改革を図らない限り、事態の改善は見込めないからだ。
そして改革の本丸は、財政健全化ということになる。ル・ペン氏が新大統領となった場合、歳出と歳入の両面でフランス国民に痛みを強いることが、果たしてできるだろうか。
戦後のシステムの制度疲労がグローバルに共通する課題である中で、日本がフランスの事例を対岸の火事だとして高を括ることはできない。今回のフランスの学生の不満に端を発したデモは、経済・社会・政治の広範にわたる、非常に複雑で絡み合った性格を持っていると言えよう。
日本でも一部に移民・難民政策の失敗という観点から今回のフランスのデモを論じる向きがあるが、そうした単純な見方では本質を見誤ることになる。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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