富裕層であればそうした金額を払うことができるが、中所得者層以下にとってはまず困難だ。こうした所得格差に応じた教育格差の拡大ばかりではなく、折からの高インフレで教育に関係する様々なコスト、それこそ大学生なら家賃であり日々の食費、交通費、文房具の費用なども増加が目覚ましい。学生本人や支える親には辛いところである。

実際のところ、家計の学費負担の問題に関しては、あくまでその国での時系列比較での検討が主となり、国際比較は参考程度の扱いとなる。2つ以上の国で学費を抑え、その負担の重さと軽さを比較できる家計など少数だからだ。とはいえ、ドイツと比較したフランスの見劣りは鮮明で、学生がデモに訴えた背景は相応に存在したと言えよう。

2026年10月6日のデモにおいて、バイヨンヌの高校生たちが教育資源の拡充を求めて抗議行動を展開した
2026年10月6日のデモにおいて、バイヨンヌの高校生たちが教育資源の拡充を求めて抗議行動を展開した(写真=Patxi Beltzaitz/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

学生の抗議に加わった政治勢力の思惑

学生によるデモがエスカレーションし、破壊行為を行ったり略奪行為を行ったりする多数の不届き者が出現したのは、ある意味ではフランスらしい光景だ。ただし今回の場合、深刻化するフランスの政情不安が様々な形で折り重なってしまった点に、これまでにない事態の深刻さを見出すことができる。これはいったい、どういうことだろうか。

2026年10月6日、パリで行われた高校生によるデモ
2026年10月6日、パリで行われた高校生によるデモ(写真=FreCha/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

フランスでは来年春に大統領選が行われる。現職のエマニュエル・マクロン大統領は憲法上の規定で出馬できないが、自身の不人気もあり、自らが率いる中道勢力から後任の大統領を輩出することが難しい情勢だ。こうした状況の下では財政運営の健全化が進まないと投資家は警戒感を強めており、それがフランスの金利高騰を呼び込んでいる。

現状、右派の国民連合(RN)から来年春の大統領選に出馬するマリーヌ・ル・ペン氏が支持率で首位を走っている。そのル・ペン氏はデモが凶暴化した背景に、フランスのこれまでの移民・難民政策の失敗があると主張する。破壊や略奪に手を染めた不届き者は移民や難民だと言わんばかりだが、実際は移民や難民以外も凶暴化している。

現在、EU各国で移民・難民政策の厳格化を訴える右派政党の多くが、ル・ペン氏の主張に賛同する。海を隔てた米国のドナルド・トランプ大統領も同様だ。そうした主張をマクロン大統領が率いるフランス政府は“チェリーピッキング”と断罪する。一方、マクロン大統領は一部の極左勢力がデモの凶暴化を扇動した可能性に言及している。

左派といえば、「不服従のフランス」(LFI)から大統領選に出馬するジャン=リュック・メランション党首が思い浮かぶ。メランション党首も今回のデモに参加している。ただし、彼がデモの組織化や凶暴化に関与した確証はなく、政府もそうした見方は示していない。いずれにせよ、フランスの政情不安と今回のデモの凶暴化が折り重なっている。