「20倍返し」わかりやすいからウケる
テレビやネットでトランプ米大統領のだみ声を耳にするとき、「わかりやすい英語だな」と感じたことはないだろうか。関税率の一方的な引き上げやイランやベネズエラへの攻撃、国際機関の軽視などで日本でもあまり評判の芳しくないトランプ氏だが、その政治姿勢に反発する人でも、トランプ氏が発する言葉自体は、これまでのアメリカの大統領や政治家より理解しやすいと感じる日本人が多いのではないかと思う。
最近のトランプ氏の言葉から2つ実例を挙げよう。
“Every time they hit us, we're going to hit them 20.”
(彼らが我々を叩くたびに我々は彼らを20回叩くだろう)
今年7月、ホルムズ海峡におけるイランとの軍事攻撃の応酬について、トランプ氏が大統領専用機内で同行記者団に発したコメントだ。attack(攻撃する)、retaliate(復讐する)といった言葉は使わず、hit(叩く、殴る)という極めて直接的な言葉を使っている。しかも、「20倍返し」という以前流行ったテレビドラマ「半沢直樹」ばりの表現だ。人命がかかる極めて重要な局面であり、アメリカのほかの大統領や閣僚だったらイランに対して同じ警告をするにしても、“face the serious consequences”(深刻な結果に直面する)といった婉曲な言い回しを使うところだろう。
日本の中学生でもわかりそうな英語だが、露骨で単純な表現がイランに対する強い牽制になったのは間違いない。ちなみにトランプ氏は1期目政権(2017年~21年)の時にニューヨークでテロが起きた際にも、犯行声明を出したテロ組織に対して“we are hitting them 10 times harder.”(我々は彼らを10倍激しく叩くだろう)と「10倍返し」を強調している。
話し言葉でSNSに投稿しまくる米大統領
“Lower prices for Americans, especially our Great Farmers, Ranchers, and Truckers, is my Greatest Priority.”
(アメリカ人、とりわけ我が国の偉大な農夫、牧場労働者、トラック運転手に、より安い価格を提供することは、私の最優先課題だ)
これはトランプ氏が自身のSNS、Truth Socialに今年10月に投稿した文章の一部だ。トランプ氏は以前、Xとなる前のTwitterに投稿していたが、2021年1月のトランプ支持者らによる米議会襲撃事件のあとにアカウントを凍結されたのを受けて、事実上自分専用のSNSとして立ち上げたのがTruth Socialだ。トランプ氏のフォロワー数は1310万人。メディアの統計によると、昨年は1日平均18回も投稿している。
引用したのは今年10月9日、トランプ政権がロシアへの制裁を一時的に緩和して、ロシア産軽油の供給を認めたことに関する投稿で、軽油が「記録的な額と速度で安くなるだろう」と強調したあとで、この文章が出てくる。日本人にはrancher(牧場主、牧童)やtrucker(トラック運転手)という言葉が若干聞きなれないかもしれないが、構文が単純なので辞書を引けば十分わかるのではないか。
日本語に比べ、英語ではもともと話し言葉と書き言葉の違いが少ないが、トランプ氏のSNS投稿はほぼ話し言葉そのままのトランプ節だ。ただ、表記方法には独特のくせがあり、Great FarmersやGreatest Priorityのようにところどころ単語の最初の文字が大文字になっている。特定の言葉を強調したいからのようだ。

