健康に長生きするためには、どんなことに注意すればいいのか。東京大学名誉教授の黒木登志夫さんは「老化によって身体のさまざまな機能が衰えると、誤嚥性肺炎や骨折などにつながりやすくなる。健康寿命を延ばすには、こうした変化を知り、病気や事故を防ぐことが大切だ」という――。(第1回)

※本稿は、黒木登志夫『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

転倒して足を痛めた老人男性
写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです

「老衰」は日本以外に存在しない

老衰は日本にしかない病気というと、日本人はみんな驚く。もちろん、歳をとって身体が弱った人、亡くなった人は世界のどこにでもいる。しかし、死亡診断書に「老衰」と書くことをWHOが認めていないのである。WHOの考えによると、人間は病気か事故でしか死なないというのだ。このため、日本以外の国には死因として老衰の記載はないことになる。

エリザベス女王は老衰と新聞に出ていた。エリザベス女王と夫のフィリップ殿下の死亡診断書には、確かに「Old age」と書いてある。フィリップ殿下のときはこの診断に疑問を呈したイギリスの新聞記事もあったが、エリザベス女王のときはそのまま受け入れられた。しかし、女王は「老」であったが、「衰」とはとても思えない。

感染しないのになぜ増え続けるのか

新聞の死亡記事を見ていると老衰で死んだ人が非常に多い。作家の大江健三郎も曽野綾子も老衰で亡くなった。2024年の老衰死亡者は、約21万人。死因の3位である(※1)。2005年以来、老衰は指数関数的に増えている。感染するはずのない老衰が指数関数的に、毎年4%ずつ増えているのは医学的には説明できない。

※1 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況 統計表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」

老衰が増えだした背景には、2000年に開始した介護保険がある。