高齢者の骨が弱くなるメカニズム


骨は一見すると、枯れ木のように見えるが、実は骨の内部では、骨を作る骨芽細胞と破骨細胞が骨を常に作り替えている。歳をとるとホルモンによって調整されているそのバランスが崩れ、骨がもろくなる。特に女性の場合、更年期以後エストロゲンの低下により、骨の破壊が進み、骨粗しょう症になりやすい。

斎藤茂吉も、歳をとったら直ぐにつまずくようになったと詠っている。背骨の圧迫骨折は、尻餅をついたときに多い。最後の歌は、座るとき注意するようにと和尚さんが檀徒に注意された歌だ。どちらの骨折も相当の痛みを伴うし、しばらくは歩けない。

この体からだ古ふるくなりしばかりに靴穿きゆけばつまづくものを(※9) 斎藤茂吉
今朝の足は昨日の足にあらざるか立ちて一二歩すなはち転ぶ(※10) 土屋文明
くれぐれもドンと座すなと言われたり圧迫骨折案ずる檀徒に(※11) 岡田独甫

※9 『斎藤茂吉選集 第七巻』岩波書店、1982年
※10 土屋文明『歌集 靑南後集以後』石川書房、1991年
※11 岡田独甫、朝日歌壇、2019年3月17日

自宅で足を骨折したシニア
写真=iStock.com/izusek
※写真はイメージです

転倒事故が多い時間帯は「朝3時〜6時」

骨折そのものは、直接生死に関わらないことが多いが、生活の質に大きく影響する。大腿骨頸部骨折は高齢者に多く、女性は男性よりも2倍多い(※12)(図表4)。

【図表4】
大腿骨頸部骨折の年齢別分布(2012年)。折茂肇らは1992年以来5年おきに全国調査を行っている。60歳代と比べると90歳以上は30倍以上大腿骨頸部骨折が多い。女性は男性の2倍以上である(※12)。出所=『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)

※12 Orimo, H., Yaegashi, Y., Hosoi, T., et al.(2016). Hip fracture incidence in Japan: Estimates of new patients in 2012 and 25-year trends. Osteoporosis International, 27(5)1777-1784.

黒木登志夫『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)
黒木登志夫『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)

高齢者にとっては、もっとも気をつけなければいけないのが骨折である。骨折により、車椅子生活、寝たきりになると、認知症が進行することがある。高齢者の骨折は、心不全と同じくらい、健康に大きな影響を与える。

意外に思われるかもしれないが、高齢者の転倒などの事故の大半は屋内で起きている。東京消防庁の高齢者の事故報告書によると、高齢者の転倒事故の発生場所とその割合は、住居内が57.4%、道路・交通施設が34.1%である。

家の中では、居間と寝室が圧倒的に多くなっている(※13)。転ぶ時間も、意外なことに、早朝の3時から増えはじめ、午前6時がピークになるという(※14)。おそらく、朝トイレに起きたとき、床に置いてある物とかひもにつまずいて転ぶのであろう。寝る前に床に置いてある物を片付けることだ。

※13 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」
※14 辻一郎『のばそう健康寿命』岩波アクティブ新書、2004年

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