高齢者の暮らしには、本人が気づきにくい「命に関わる危険」が潜んでいる。東京大学名誉教授の黒木登志夫さんは「家族がすべてを見守ることは難しいからこそ、事故や被害を防ぐ環境づくりが必要だ」という――。(第3回)

※本稿は、黒木登志夫『高齢者よ、君たちはどう生きるか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

消火器、詐欺、温度計のイメージ
写真=左)iStock.com/Chaichan Pramjit、中央)iStock.com/Ju Production、右)iStock.com/lixu
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高齢者の命を奪う「犯人」たち

高齢になると、財産だけでなく、生活のあらゆる面で安全に気を配らなければならなくなる。高齢者を狙った詐欺が毎日のようにテレビで報告されている。高齢者の住む一軒家を狙った強盗事件も発生している。家の中にも危険がある。火事跡から高齢者夫婦が焼死体で発見といったニュースを耳にすることも多い。

普段使っている風呂、階段などは、一つ間違えば、命に関わる事故につながりかねない。地震、洪水などの自然災害に対する対策も考えているであろうか。離れて暮らす子どもたちの心配は尽きない。

「マサカリ投法」といわれたオリオンズの村田兆治は、引退後72歳のとき、木造2階建ての自宅が火事になり死亡した。火事による死亡者は年に1400人以上だが、その76%は65歳以上の高齢者である(※1)。火災による死亡原因は、一酸化炭素のような有毒ガスの吸引、熱い空気により火傷をした気道の閉塞、それに全身の火傷などさまざまである。

※1 消防庁防災情報室長「令和6年(1月~12月)における火災の状況(確定値)について」(令和7年11月25日)

IHでガスコンロの不始末を防ぐ

住宅火災の66%は一戸建て住宅であり、マンションのような共同住宅はその半分である。原因は、放火を除けば、タバコ、ストーブ、配線、コンロなどである。たとえば、こたつのまわりに電気ストーブを置き、さらに部屋に衣類と雑誌新聞を置いてあるような生活をしていると火事になりやすい。

最近よく見聞きするリチウムイオン電池発火は、純正電池を使うこと、過充電しないことのような予防法しかないようだ。リチウムイオン電池という優れた発明でノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生には、安全な電池を開発してほしい。

我が家の台所は、数年前にガスからIHに替えた。妻はIHに替えた当初は毎日、IHと喧嘩していたが、次第に文句を言わなくなった。IHは火力も強く、調整もしやすい。長時間の煮物のときも安定した火力が得られる。オーブンも使いやすい。IHがよいのは、ガスと違って炎が出ないので安全なことである。

高齢になり、特に認知機能に問題が生じると、ガスの消し忘れなどのトラブルが多くなる。高齢者の火事のニュースを見るたび、もしかすると、ガスコンロの不始末ではないかと気になっている。高齢家族は、IHに切り替えるよう強く勧めたい。