OpenAIを辞めたダリオ・アモデイ

ダリオ・アモデイは、OpenAIで研究主任を務めた後、安全性への懸念から2021年に独立してアンソロピックを設立したという経歴をもつ。彼のタイムラインも非常に短い。「ほぼすべてにおいて人間を超えるAI」が2~3年以内に実現する可能性があると述べているほか、先にも触れたように、2026年1月のエッセイ「テクノロジーの思春期」で「2027年ごろにはデータセンターの中に『天才たちの国』が出現しうる」と書いている。つまり2027年には、高度なAIが自律し、かつ協力して難しいタスクを解くようになると予測しているのだ。

未来的なデータセンターの内部
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アモデイが描くのは、AIによる研究の加速が次なるAIの進歩を生み、それがさらに研究を速める循環である。この循環が強まるにつれて、開発の速度も増していく。彼はこうした推移を「ソフト・テイクオフ」と呼び、滑らかでありながら伸び率の高い指数関数的な成長としてとらえている。いっぽう、AIによって文明規模の破局が起こる確率は10~25%と見積もる。

「100年分の進歩が10年に短縮」

アモデイの特徴は、AGIの可能性とリスクの両面を、同じ人物がきわめて具体的に論じている点にある。2024年10月のエッセイ「愛と慈みの機械たち」では、「AGIが実現すれば、50~100年分の生物学・医学の進歩が5~10年に圧縮されうる」と論じた。彼はそこで、ほとんどの感染症と遺伝性疾患の克服、がんの大半の予防と治療、老化の劇的な減速、うつ病や統合失調症といった精神疾患の根本的な治療を具体的に列挙している。

さらに経済面では、AIが数十億もの人びとを貧困から抜けださせ、食糧や清潔な水、教育へのアクセスを根本的に変えうると論じた。このエッセイは、AGIピル世界観の楽観的な側面を最も詳細に描いた文書のひとつだといえる。

一方で著書ではAIの危険性を指摘

そのいっぽうで、つづく「テクノロジーの思春期」では、AGIのリスクを約2万語の長文エッセイとして整理し、自律性のリスク、破壊のための悪用、権力奪取のための悪用、経済的混乱、そして人間の目的や社会のありかたへの間接的な影響という5つの領域を列挙した。AGIの可能性とリスクの双方に、同じ人物が具体的に言及している例は珍しい。

【図表2】主なAI開発企業とCEO