チーム内で対立が起きたとき、リーダーはどんな行動をとればいいのか。組織心理に詳しい臨床心理士・公認心理師の佐藤映氏は「対立(コンフリクト)が起きると焦るリーダーも多いが、実はチームの文化を構築する絶好のタイミングだ。リーダーはぜひ、ある問いをチームに投げかけてほしい」という——。

※本稿は、佐藤映『臨床心理の知見×性格検査の開発でわかった 部下が辞めないリーダーのやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

腕を組んで向き合う二人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

対立が起きたらリーダーはどうするか

チーム内で対立(コンフリクト)が起きたとき、それをどう扱うかはチーム文化の大事なテーマです。

リーダーとしては、事実確認し、どちらが正しいかを客観的に判断したくなると思います。ところが、対立の多くは事実確認では決着しません。

「何が起きたのか」については両者とも同じようなことを言うのに、「それをどう受け取ったか」は両者でまるで違うということが起きるからです。

たとえば、営業担当が「開発チームが遅い」と言い、開発担当が「営業が無理な納期を勝手に約束する」と言っているとします。状況を聞きとって出来事を日付順に並べれば、誰がいつ何を依頼したかはわかります。

しかし、それを確認したうえで「では次から3日前までに依頼してください」とルールを決めたとしても、対立構造は何も変わりません。

営業の側には、客先で頭を下げ続けてきた時間や労力がありますし、開発の側には、何度言っても聞いてもらえなかったという悔しさの積み重ねがあるからです。

この部分が共有されないままルールだけが決まっても、しこりが残り、また別の形で対立として出てくるのです。

職場で起こる「3つの対立」

「対立を解消する」とは、「どちらが客観的に正しいかを決めること」ではなく、「それぞれが何をどう受け止めたのかを言葉にして共有できる状態をつくること」です。

チームを長く研究してきた組織行動学者のジェーンは、職場の対立を大きく3つに分けています。

① 課題をめぐる対立―この施策をやるべきか、別の施策をやるべきか、という仕事の中身に関する対立。うまく扱えば意思決定の質を高めることにつながる

② 関係をめぐる対立―「あの人の言い方がいやだ」「あの部署とは合わない」といった人間関係の対立。主観的な理由が多く、仕事の議論に見えても実際は感情的なぶつかり合いであることも多い

③ 進め方をめぐる対立―決めるのは誰か、どういう順番で進めるか、といったプロセス上の対立。意外と見落とされやすく、方針には合意しているのに進め方の期待値がズレていて、あとでもめるということがこれに当たる

このうち、①課題をめぐる対立は、チームにとってむしろ必要な対立です。

互いに説得しようとして情報を集めたりアイデアを出すことで、前提の抜けモレが見つかったりして、その後の決定の質も上がります。

①課題をめぐる対立が、②関係をめぐる対立に変化してしまわないかには注意が必要です。起案への反論は、言われた側は自分への否定として受け取りやすいものです。それが何度か続くと、だんだん案の中身ではなく、「あの人がまた言ってきた」と人間関係に反応するようになってしまいます。

この段階までくると、いくら論理的に議論しても改善しづらくなります。

つまり、リーダーが目指すのは、課題をめぐる議論が、やがて人間関係をめぐる対立になるのを防ぐことだといえます。