「チームに対立はない」は本当か

もう2つ押さえておきたいことがあります。

心理学者のコールマンは、「職場の対立が対等な関係で起きていることはほとんどない」といっています。たいていは、どちらかの立場が強い状況で起きているわけです。役職の差だけではありません。その部署の発言力や、社歴、専門性、リーダーとの仲の良さ、そういう目に見えない力関係がからんできます。

パワーの差があるとき、弱い側は対立をそもそも表に出そうとしません。あきらめるか、辞めるか、調子を崩すか、といった結末になりがちです。

ですので、リーダーが「うちのチームに対立はない」と感じている場合は、「本当にないのか」「表に出ていないだけなのか」をあらためて考えてみる必要があります。

そして、対立を解消するためにリーダーが両者の間に入るときには、「リーダー自身は中立ではない」と自覚しておいたほうがいいでしょう。リーダーは評価をする立場です。当事者にとって、リーダーの前で本音を話すというのは、安全な行為ではないところがあるのです。

解決に不可欠な2つの変化

この2点を頭に入れつつ、実際には、どう対立の解消を促せばよいでしょうか。

調停の研究者であるブッシュとフォルジャーは、「対立に第三者が入るときの目的」を、「合意をつくることではなく、当事者に2つの変化を起こすことだ」と考えました。

1つめの変化は「エンパワーメント」です。自律性・有能感・関係性という自己決定理論の要素を満たすように、自分の置かれた状況について、自分で考え、自分で決められる感覚がもてるようになることです。

2つめの変化は「承認」です。相手がなぜそう振る舞っているのかがわかり、その背景の事情がわかったり、解像度が上がって理解できるようになることです。

たとえば次のようなケースを考えてみてください。

リーダーが営業担当と開発担当の両者の話を聞いて、「わかった、じゃあ今後は納期を3日前倒しにしよう」と決めてしまうとします。しかしながら、リーダーが決めてくれたほうが早いものの、当事者の側には、「自分の状況を自分で動かした」という思いが残らないものです。ですので、次に似たことが起きたとき、またリーダーのところにもち込まれることになります。

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この例を先ほどの「対立に第三者が入るときの目的」の2つの変化でとらえ直してみます。