結局、延期するしかないのであるなら、元から規制強化を志向しない方が正しいわけだが、そう考えが至らないからこそ、フォンデアライエン執行部は規制の強化を掲げ続ける。2024年12月に第二期を迎えたフォンデアライエン執行部だが、第一期の反省を踏まえて現実的な判断に努めるかと思いきや、過剰規制の提案と延期を繰り返す。

日本もまた、2030年までにメタン排出量を2013年度比で11%減らす目標を打ち立てている。しかし、基本的には各業界による自主的な取り組みを中心としており、EUのような強い規制を敷いていない。環境対策を重視する立場からは手緩いかもしれないが、現実的なアプローチと言える。あらゆることに通底するが、過剰規制こそが問題だ。

「ブリュッセル効果」も風前の灯火

これはもはやフォンデアライエン執行部の悪癖としか言えないため、2029年11月までの任期を通じて、EUは延々とこのパターンを繰り返すことになるだろう。当然、フォンデアライエン委員長が狙っていた“ブリュッセル効果”(域内の市場参加者に対する規制強化を通じて域外に規制を輸出する効果)の発動など、風前の灯火である。

欧州連合の小さな旗
写真=iStock.com/butenkow
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話は一転するが、最近とある会合で、EUに当事者意識などないのではという質問を受けた。超国家主体であると同時に、特定の意思決定者が責任を持つような体制ではないというのが質問の趣旨だ。確かにその側面は否定できないが、合議制による意思決定は行われているため、当事者意識の欠如とまでは言えないのではないかと返した。

しかし同時に、仮に当事者意識が欠如した指導者たちがEUの意思決定を下しているとしたら、これほど恐ろしいことはない。様々な規制が、無責任な意思決定者によって強化されているとしたら、まさにホラーストーリーである。当事者意識を持たない意思決定者が決めた規制強化に伴うコストを各国の国民が負担するホラーストーリーだ。

日本の一部にも、EUのような規制強化に力点を置く産業政策を好む声があるようだ。中国が志向する“上からの”産業政策の成功例に刺激されたこともあるのだろうが、規制はあくまで、民間に公平なルールの下で競争させるためのルールである。過剰規制では、民間の活力は失われてしまうという古典的な命題を思い返すべきだろう。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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