フランス右派が「歳出削減」に転じた理由
フランス金利の急騰が伝えられて久しい(図表1)。注目されるのは、右派政党・国民連合(RN)の変化だ。それまで歳出拡大による成長戦略を訴えていたが、財政健全化に主張のかじを大きく転換した。来年4月と5月に行われるフランス大統領選に同党から出馬するマリーヌ・ル・ペン候補も、大胆な歳出削減を公約に掲げるに至った。
保守系の有権者の間で絶大な人気を誇るル・ペン候補とはいえ、かつてのように保守=健全財政といった構図が成り立たないのが、フランスのみならず、グローバルに共通する現代の政治の構図である。RNはもともと、有権者に対するアピールとして歳出拡大による成長戦略の必要性を訴えていたわけだが、ル・ペン候補は、それを退けた。
歳出削減は有権者にとっては耳の痛い話となる。そのため、自らの悲願であった大統領への道を遠ざけるものとなりかねない。しかし、ル・ペン候補は敢えて、歳出削減を打ち出した。それも、当初は2032年までに総額1250億ユーロとしていた削減額を、6日には1400億ユーロにまで増額すると発表。財政健全化への強い姿勢を示した。
最左派が唱える「国債の帳消し」
要するに、ル・ペン候補は金融市場による警告に耳を傾けたのである。このまま長期金利の上昇ないしは高止まりが続けば、フランス財政は火の車となる。利払い費は膨張し、政策的経費のみならず、一般的経費まで圧迫する。加えて、格付け機関による格下げを呼び込み、それがさらなる金利高につながる。まさにホラーストーリーである。
金利高は政府のみならず、民間の経済活動も圧迫する。せっかくル・ペン新大統領が誕生しても、自らが描く理想の経済運営ができないままに、その火消しに追われるだけとなる。そうであるなら、燻りが火柱になる前に鎮火作業に努める必要がある。現実的な判断をしたからこそ、ル・ペン候補やRNは財政健全化にかじを切ったのだろう。
財政健全化を目指すという意味では、フランス大統領選の候補者の間で大きな違いは見られない。問題はその手法で、最左派の有力候補であるジャン=リュック・メランション候補(不服従のフランス=LFIの党首)は、過去の金融緩和の一環でフランス中銀が購入したフランス国債をフランス中銀の負担で帳消しにすればいいと発言した。


