財政危機ならEU内の発言力も失う

現実問題、欧州連合(EU)の中心であるフランスが本格的な財政危機に突入しそうな場合、隣国のドイツを中心とする救済の動きが期待されるところだ。フランスが大き過ぎて潰せないためだが、その場合、フランスのEUにおける政治的な権威であり権力はガタ落ちする。こうした事態を回避したい思惑も、ル・ペン候補にはあるだろう。

そもそも中道の諸政党、つまりマクロン大統領率いる「再生」なり、中道右派の共和党、中道左派の社会党の諸政治家は、これまでの国政運営の経験もあり、今回の金利高の深刻さを十分に理解していると考えられる。フランスを潰さないための力学として、これまでの右派回避から、左派回避が確たる動きになる可能性は十分に高いと言えよう。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領
フランスのエマニュエル・マクロン大統領(写真=President Of Ukraine/PD-author-FlickrPDM/Wikimedia Commons)

世界の金融市場が財政拡張を警戒する

一連の問題はフランスだけにとどまらない。コロナショックに伴う景気下振れを受けて、財政拡張と金融緩和がグローバルに強化された。その結果、世界の債務は官民を問わず膨張したが、直後の高インフレに伴う利上げで債券市場が復活すると、投資家は現在の債務の持続可能性へ疑義を呈するようになり、それが世界的な金利高につながった。

コロナショック前の低インフレの時代であれば低金利で債務を支えることができたが、コロナショックを経て債務そのものが膨張し、さらに高金利となったことで、金融市場は債務の持続可能性に対して警告を発するようになっている。その結果がグローバルな金利高であるのだから、いずれの国も財政拡張には慎重とならざるを得ない。

米国でも、いわゆる“レガシーづくり”に邁まい進するドナルド・トランプ大統領はさておき、財政健全化への機運が高まっている。上院では民主党のみならず、トランプ大統領を排する共和党所属の議員の中からも、現状の財政運営に対する疑義が呈されている。11月の中間選挙で敗北するとなると、こうした流れはさらに強まるはずだ。

歳出拡大を模索し続ける日本への警告

もはやグローバルに財政拡張は許されないのである。現状を維持するだけで精いっぱいであり、追加的な歳出拡大の余地はまずない。少なくとも、金融市場はそう考えている。そうした中でも日本では、自らが“リフレ派ではない”と火消しに努める政権関係者やアドバイザーが声高となって、引き続き、政府に歳出を拡大させようと努める。

彼らは金融市場が誤解していると繰り返すが、そうした姿勢そのものが金融市場を刺激していることに、いい加減、気付くべきだろう。触らぬ神にたたりなどないのである。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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