新メタン規制を1年延期したEU
欧州連合(EU)がまた同じ轍を踏んでいる。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は10月6日、欧州議会で演説し、2027年年明けから予定されていた新メタン排出規制を1年延期すると発表した。規制の強化を表明しては、現実が追い付かないために、結局それを延期する。フォンデアライエン体制で定着したパターンだ。
この新メタン規制は、域内の輸入業者が域外から化石燃料(原油・天然ガス・石炭)を輸入する際、それがEUと同等のメタン排出量の監視・報告・検証(MRV)措置を講じた生産者のものであることを、当局に証明するよう求めるものである。折からの価格高騰に窮するエネルギー業界は、その適用を延期するようかねて求めていた。
今年2月末に生じたイラン発のエネルギーショックを受けて、インフレがグローバルに加速していることは周知の事実だ。当然ながらEUでもエネルギー価格(生産者物価ベース)が着実に上昇している(図表1)。その水準は2022年に生じたロシア発のエネルギーショックよりも下だが、戦争が泥沼化する中、着実に切り上がっている。
現在、エネルギー価格の上昇は液体燃料(ガソリンや軽油・灯油)と気体燃料(天然ガスやプロパンガス)が中心だが、今後は電気料金も連れ高になると予想される。企業による吸収にも限界があるため、エネルギー高のコストは徐々に家計に転嫁される。何より望まれることはエネルギーの安定確保であり、そのための規制緩和である。
規制強化と「脱ロシア」を急いだ誤算
この観点からは、新メタン排出規制の適用の延期は正しい政策判断となる。一方、規制強化を掲げながら、その適用の延期を繰り返すのは、EUの悪癖と言える。先行して規制強化に向けた対応を行っていた企業にとっては埋没費用(サンクコスト)が嵩むことになるし、それを回避すべく企業が対応を怠るという、悪循環が出来上がる。
ところでEUは、化石燃料の脱ロシア化の一環として、短期(スポット)契約に基づくロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入を2026年4月25日で打ち切った。イラン情勢の動向がどうなるかも不透明であるのに、脱ロシア化を優先した形だ。さらに6月17日には、パイプライン経由での輸入も、短期契約分に関しては打ち切った。


